重い心臓病を患い国内で心臓移植を待っていた男の子が2023年、手術に成功しました。待機中から退院までを追いました。
京都府出身の中園瑛心さん(13)は、2023年に大阪府の病院で心臓移植を受けました。
元気に小学校に通っていた瑛心さんは、9歳の時に心臓の筋肉が薄くなりポンプ機能が低下する拡張型心筋症を患い、心臓移植が必要と告げられました。
中園瑛心さん「好きな事は習い事とかでそろばんをやっていたりしたんですけど、それも心不全が出ていったん中断になってしまったというわけです」
日本の100万人当たりの臓器提供数はアメリカの51分の1、韓国と比べても9分の1と少なく海外での移植を望みを託す患者が後を絶ちません。
2人の姉妹がいることもあり、瑛心さんの両親は国内での移植を選択しました。瑛心さんは2019年に補助人工心臓を装着し、移植を待つ日々が始まりました。
瑛心さんの主治医・国立循環器病研究センター坂口平馬医師「コロナで移植件数が落ちてしまって、ずっと止まった時間がここ3年くらいありましたね」
15歳未満からの臓器提供が可能になった2010年以降、国内における小児の心臓移植は徐々に増加しています。瑛心さんが待機を始めた2019年には17件ありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で医療現場がひっ迫したことなどから2020年以降は減少しました。
入院中に中学生になった瑛心さんは、退院できたら地元の学校に戻ることを目標に勉強にも熱心に取り組んでいました。
中園瑛心さん「移植して家に帰って学校に行ってみんなと勉強したい。やっぱり家族で一緒にご飯食べたりとかしたいです」
3年半以上の待機期間を経て、瑛心さんは2023年に移植に成功しました。
中園瑛心さん「もう元気でうれしい。その一言かな。鼓動がドキドキが感じやすくなって。元気に動いてるねえって」
母親中園みどりさん「ドナーさんのありがたい優しさのバトンパスでつないでいただいた命になるので、ありがたみを感じて心の中のドナーのお友達と一緒に共に成長できる子になってほしいなと」
移植を終えた瑛心さんを待っていたのはリハビリです。日常生活に戻るためには、長期の入院生活で低下した筋力を少しずつ取り戻さなければなりません。
国立循環器病研究センター理学療法士山下遥さん「正直、術前は絶望的だったかなというような状態で、椅子からも手を持たずに立ち上がれない状態。かなり変わりましたね、歩き方は。みんなに褒めてもらえるぐらいには」
入院生活は、4年以上にわたりました。
中園瑛心さん「今までありがとうございました。あした退院します」「もう早く家に帰りたくてうずうずしています。ドナーさんには元気な心臓をくれてありがとうって。自分はちゃんと生きてるよって」
退院の日を迎えました。姉と妹も迎えに来てくれました。
「あなたは入院生活や手術を大変頑張りました。その努力をたたえこの賞を贈ります。おうちに帰ったらいっぱい遊んでたくさん勉強して、色々なことを経験してください」
医師や看護師らに見送られ、京都府の自宅へ。病院の外に出るのは4年ぶりです。懐かしい風景に記憶がよみがえります。
母親中園みどりさん「瑛心、小学校見えてきたよ」
中園瑛心さん「ばあちゃんちの近く。そして母校、久しぶり」
家族は、移植を終えた瑛心さんを新たな気持ちで迎え入れるため、2023年に引っ越しを済ませていました。初めて入る自分の部屋、一番のお気に入りはベッドです。
中園瑛心さん「めっちゃモフモフ。こんな感じで寝るのか、最高」
姉中園若愛さん「めちゃめちゃうれしいし、今まで通りの生活ができると思えばワクワクが止まらないです」
妹中園栞愛さん「みんなで仲良くご飯を食べたいなって思ってます」
母親中園みどりさん「やっと連れて帰ってやれたなっていうのが一番の気持ちです。移植できたからゴールじゃなくてそこがリスタート。失った4年間の日常をいかに早く取り戻すかっていうのが、これからの瑛心の課題かなと思います」
1カ月後の復学を目指し、瑛心さんの心は前を向いています。
中園瑛心さん「みんなと勉強できるのが楽しみ。ワクワクが止まらない」