青い海が広がる沖縄。米軍基地の7割が集中するこの島で、今、自衛隊基地の増強が進んでいます。“要塞化”とも言われる現状を取材しました。

■沖縄慰霊の日「戦場にするな」 総理らにヤジ

凄惨な地上戦が行われ、多くの犠牲者が出た沖縄戦。あの日から79年、沖縄はきょう24日、「慰霊の日」を迎えました。 「平和だね。平和になることに限るね。戦争反対だね」 参列した岸田総理。その来賓あいさつの途中… 「岸田―!沖縄を戦場にするな!」 と大きなヤジも飛びました。玉城デニー知事は… (沖縄県 玉城デニー知事)「自衛隊の急激な配備拡張が進められており、悲惨な沖縄戦の記憶と相まって、私たち沖縄県民は強い不安を抱いています」 自衛隊配備に対する強い不満を口にしました。台頭する中国などを念頭に、沖縄など南西諸島で進む自衛隊の配備強化、いわゆる「南西シフト」。2016年以降、次々と配備・増強が行われ、一部からは“要塞化”との声も…

■「ミサイルに挟まれ暮らす」 宮古島の現状

沖縄県・南西部に位置する宮古島。「宮古ブルー」と呼ばれる透明度の高い海が人気で、年間約100万人が訪れる県内屈指の観光地です。しかし、その一方で… (瀬尾桃香ディレクター)「宮古島の中心部に来たのですが、自衛隊の配備に反対する住民による抗議活動が行われています」 (民宿を営む 清水早子さん(75))「下手をしたら本当にこの島が戦場になりかねません。そして、宮古島の自衛隊の隊員は真っ先に戦場に送り込まれるわけです」 街が観光でにぎわう一方、島は自衛隊の基地問題に揺れています。宮古島で民宿を営む清水早子さん。 (清水早子さん)「ここから見えます。わかりますか?いつでもこの島から戦争が始められる、戦闘状態が始められる軍備が見えているわけです」 基地の中では、実践的な訓練が行われていました。ここは陸上自衛隊の宮古島駐屯地。2019年に開設され、4年前にはミサイル部隊が配備されています。さらに… (清水早子さん)「こちらが航空自衛隊のレーダー基地で、反対側が陸自のミサイル基地なんですね。この目の前の集落、50数軒あるんですけれども、基地と基地に挟まれて暮らすことを余儀なくされているんですよ。ミサイルとミサイルに挟まれて暮らしているわけですよ」 この基地に挟まれた集落で暮らし、駐屯地の目の前でメロンを栽培する仲里成繁さん(70)。 (メロン農家 仲里成繁さん(70))「最初の頃はこっちでミサイル発射車両の点検作業とかをやっていたんですね。こんな公道のすぐそばで、発射車両の整備とかをしないでくださいと、直接ゲートに行って抗議したこともあって」 Q.結構怖いですよね? 「そうですね、いやですね」 集落の住民らは、自衛隊の配備や訓練などに抗議の声を上げてきましたがその声は届いていません。仲里さんは、国が強引に自衛隊の配備・増強を進めてきたと感じています。 (仲里成繁さん)「ちゃんと、やっぱり話し合いを持ってほしいし、それをしないまま上から押さえつけるだけのやり方だと僕は見ていますので」 2021年には、島の南部に弾薬庫が。その後、射撃訓練場も開設。そして去年、宮古島で初めて公道を使った訓練を行っています。 (瀬尾桃香ディレクター)「こちらは宮古島市の総合体育館です。老朽化に伴い新しく建て替えられるのですが、有事に備えた地下シェルターが作られるということです」 さらには、市民が避難できるシェルターも建設される予定です。 (清水早子さん)「(政府に)有事を回避するための(外交などの)努力が全く見えないのに、『有事が起こったらいけないから避難してください、そのために軍備を拡大します』しか聞こえてこないんですよ。それは説得力ないです、住民にとっては。」 県民の4人に1人が犠牲になったとされる沖縄戦。宮古島も軍事施設を中心に連日爆撃を受け、街は廃墟と化しました。清水さんは基地が集中することで、戦争に巻き込まれるのではないかと心配しています。 (清水早子さん)「まず戦闘が始められるのは、犠牲になるのは、私たち南の島々だという思いがあるんですね」

■自民県連も反対 「寝耳に水」の基地計画も

うるま市にも要塞化の波が押し寄せてきました。今年3月、本島では初となる地対艦ミサイル部隊が配備されましたが、そこへ新たな訓練場の整備計画が持ち上がったのです。 ここは「県立石川青少年の家」。年間約4万人の小学生らが訪れる場所で、キャンプや登山などが行われています。国はこのすぐ隣のゴルフ場跡地に、訓練場などを建設すると言い出したのです。 (県立石川青少年の家 新里誠主任)「ここにちょっと谷間があります。この谷間の向こう側です。離着陸の訓練とか、夜間訓練とか色々行う予定だと聞いて」 実は、施設がこのことを知ったのは、新聞報道だったそうです。 (新里誠主任)「訓練場の計画が出ているよと(同僚が)知らせてくれました。本当にびっくりして信じられないというか、(国から)何も説明がなかったので寝耳に水でした。近くにあるのではなくすぐ隣なんですね」 この国のやり方に、住民からは不満が噴出。 (住民説明会に来た住民)「よくもこんな恐ろしいこと考えるなと」 (住民説明会に来た住民)「沖縄県の教育のことを何も考えていない」 地元自治会や、市議会、さらに、自民党の県連までもが反対に周ったのです。そして… (木原稔 防衛大臣)「住民生活と調和しながら、訓練所要等を十分に満たすことは不可能であると」 計画は白紙となりました。 国に申し入れを行った自民党沖縄県連の島袋大幹事長。自衛隊配備には容認の立場だといいますが、国の進め方には不信感を持ったと話します。 (自民党沖縄県連 島袋大 幹事長)「この手続きですよね。そういう地域の合意形成が必要な中で、地域の皆さん方に何も説明しないがままに来たというのは、あまりにもちょっと違うでしょうと。沖縄の自民党も政府にそう言われたから『はい、そうです』ではなくて、沖縄の自民党だからこそ、政府にきちんとものが言えるというシステムを作っておかないと」

■“戦争の準備”と若者危機感「外交を」

米軍基地の7割が集中しているうえ、自衛隊の配備強化も進む沖縄。今、沖縄の若い世代も危機感を抱いています。 (沖縄対話プロジェクト 神谷美由希さん(34))「ある意味、戦争の準備みたいなものじゃないですか。『沖縄だったらいいじゃない』みたいな、『沖縄が戦争になるんだったら』みたいな感じで思う人も多分いるんですよ。特に日本の政府とかの人たちは『自分たちは死なないけど』みたいな感じ」 「沖縄対話プロジェクト」を立ち上げた一人、神谷美由希さん。沖縄対話プロジェクトでは、「台湾有事」を念頭に、台湾や中国の専門家、市民同士で直接話し合い、平和的な解決を探ってきました。 (神谷美由希さん)「(政府は)もっと平和的に外交を頑張ってほしいと思うんですけど、私たちの知らない間にどんどん色々なものが進んでいってしまっていて、すごく恐怖を感じている沖縄県民も多くいて、すごく恐怖を感じています」

6月23日『サンデーステーション』より