イギリスを訪問中の天皇皇后両陛下はチャールズ国王夫妻主催の晩餐会に出席し、天皇陛下がおことばを述べられました。強調されたのは未来へ続く両国の友情。チャールズ国王からは陛下に勲章が贈られました。

■バッキンガム宮殿で晩餐会

バッキンガム宮殿で開かれた晩餐会。両陛下と国王ご夫妻が言葉を交わされる姿はパレードの時から変わらず、話題は尽きないようです。天皇陛下は燕尾服、雅子さまは白のドレス。頭上にはティアラが輝いています。

晩餐会には日本とイギリスの約170人が出席しました。スピーチに立ったチャールズ国王。その冒頭では…。

イギリス チャールズ国王 「英国にお帰りなさい」

オックスフォード大学で学ばれた両陛下への言葉です。

イギリス チャールズ国王 「日英両国のパートナーシップの核心にあるのは緊密な友情です。これは国際ルールとグローバルな制度の重要性に対する相互理解に基づくもので、最も暗い年月をも含んだ歴史の教訓の上に築かれてきました。今日私たちはこれらの原則がかつてないほど問われる世界に直面しています。私たちが共有している自由、民主主義、法の支配という価値観がこれほど重要になったことはありません」

■勲章に刻まれた皇室外交の歴史

現在の世界情勢に触れつつ、チャールズ国王が語った「最も暗い年月」と「歴史の教訓」。それは国王が天皇陛下に贈った『ガーター勲章』にまつわるストーリーにも深く関わっています。

ガーター勲章はイギリスで最も古く、位の高い勲章の一つです。14世紀に創設された騎士団が由来とされ、勲章を贈ることは騎士団の一員に加える意味合いを持ちます。勲章に刻まれたモットーは「悪意を抱く者は恥を知れ」です。

外国に贈るのは、基本はキリスト教の国が対象ですが、日英同盟の締結を機に明治天皇が受章。それ以降、大正天皇、昭和天皇にも贈られてきました。しかし、その後はく奪されることになります。

当時のイギリス領に奇襲攻撃をしかけ、戦争の道を突き進んだ日本。この選択が後にイギリス兵捕虜の強制労働へとつながり、両国の関係に禍根を残しました。

しかし戦争が終わると、皇太子だった上皇さまがエリザベス女王の戴冠式に参列されるなど、関係を再び深めてきました。

そして、終戦から四半世紀が過ぎた1971年、国賓として招かれた昭和天皇は、ガーター勲章を身につけられています。エリザベス女王は騎士団の一員として再び迎えることを選んだのです。

ただ、この時にはまだ温度差がありました。

エリザベス女王(1971年) 「両国民の関係が常に平和で友好的であったと偽ることはできません。しかしその経験ゆえに、二度と同じことが起きてはならないと決意を固くするのです」

このスピーチに対し、昭和天皇は過去の戦争に言及しませんでした。しかし、昭和天皇の訪英が道を開き、以後皇室と王室は行き来を繰り返してきました。

■晩餐会で「戦争」語った上皇さま

1998年の訪英で天皇としてガーター勲章を受章された上皇さま。両国の間のトゲとなっていた「戦争」に触れられました。

上皇さま(1998年) 「戦争により人々の受けた傷を思う時、深い心の痛みを覚えます。両国の間に二度とこのような歴史の刻まれぬことを衷心より願う」

■「英国訪問 次世代への一助に」

そして、戦後80年が近付きつつある2024年。天皇陛下のお言葉は、戦火を交えた歴史に触れながらも未来を見据えるものでした。

天皇陛下 「日英両国民の長年にわたる心を開いた話し合いと真の相互理解への努力が実を結び、両国が連携・協力して世界を牽引している分野がこれまでも、またこれからも数多あるということを大変うれしく思います」

日英が世界を牽引する分野。陛下は最先端の医学、環境問題への取り組みなどを挙げられました。

天皇陛下 「日英関係は長い年月をかけ、世代を超えた人々の交流を通じて育まれてきました。今回の英国訪問を通じて、両国の友好親善関係が次代を担う若者や子どもたちに着実に引き継がれ、一層進化していく一助となれば幸いです」