急速に外国為替相場が円高にシフトした。25日、ドル円は一時151円90銭台まで下落。3日につけた161円80銭近辺から、1カ月に満たない短期間で10円幅の円高進行となった。トランプ米前大統領(78)が、16日に公開された米ブルームバーグによるインタビューの中で、「米国は通貨の問題を抱えている。ドル高と円安、人民元安、とんでもない」と発言したことが、急激な円高進行の契機の一つとなった。加えて、日本銀行の金融政策決定会合が31日に開催される予定で、政策金利の利上げ観測が高まっていることから、日米金利差の縮小が予測され、ドルを売って円を買い戻す動きが作用したと見られている。

トランプ氏の事実上の公約となる共和党の政策綱領には、トランプ氏が信条とする「米国第一」が強調されている。経済政策では、関税引き上げによる保護主義、インフレ対策の重視、また、米自動車産業の規制撤廃などが記されており、再選を果たすことになれば、世界と日本への影響は不可避との指摘もある。対中政策では、トランプ氏は、世界貿易機関(WTO)の規定に基づいて関税を低く抑える「最恵国待遇」を撤回し、「重要物資の輸入を段階的に停止する」としている。さらに、トランプ氏は、中国車の輸入を阻止する」とも訴えており、バイデン大統領が推進してきた電気自動車(EV)の普及促進を見直す方針も鮮明にしている。

米大統領選に向けて、共和党全国大会で副大統領候補にバンス上院議員(39)が指名された。バンス氏は昨年の講演で、「何よりも防がなければならないのは中国による台湾侵攻だ」と主張したうえで、「台湾では非常に大量のコンピューターチップが製造されており、米国経済に大きな損失を招く」と中国が最大の脅威であると警戒を訴えていた。一方で、トランプ氏は、16日に公開されたブルームバーグとのインタビューで、台湾を巡る経済安全保障に言及し、「台湾は米国の半導体事業を全て持っていった。今、台湾が米国内に新しい半導体工場を建てるために、米国は数十億ドルを供与している。台湾は、半導体事業を持っていくだろう。言い換えれば、台湾は米国に半導体工場を建てるだろうが、自国に半導体事業を持ち帰るつもりだ」と語り、台湾をはじめ半導体業界に衝撃を与えた。さらに、トランプ氏は、「台湾は防衛費を(米国に)払うべきだ。米国は保険会社のようなものだ。台湾は何の対価も米国に払っていない」と苦言を述べ、警戒感を示した。この発言により、半導体生産の世界最大手「TSMC」は、ニューヨーク株式市場で3%超下落した。

★ゲスト:前嶋和弘(上智大学教授)、峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員) ★アンカー: 木内登英(野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)