アメリカから求められていた鉱物資源を巡り、ウクライナが協定案に合意しました。ただ、安全保障は確約されていません。大丈夫なのでしょうか。

■米へ“鉱物資源を提供”協定案

 首都キーウから車で4時間以上。ウクライナ中部のキロボフラード州です。悪路を走り、たどり着いたのは…。

 ウクライナの大地に眠るチタンやリチウムなどの希少な鉱物資源。ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、焦点の一つとなっています。

トランプ大統領 「私たちが出した総額の見返りを求めている。レアアースであれ石油であれ、手に入れられるものすべてだ」

 アメリカのトランプ大統領が、これまでの支援の見返りとして鉱物資源の権益を求めているのです。

 ウクライナの環境保全・天然資源省は、ウクライナのチタン埋蔵量はヨーロッパ最大。リチウムの埋蔵量もヨーロッパ最大だとしています。

 アメリカのトランプ大統領は25日に…。

トランプ大統領 「(Q.ゼレンスキー大統領が金曜日に来る?)金曜日に来ると聞いた。そうしたいなら構わない。一緒に署名をしたいようだ。大きな取引だ」

 トランプ大統領によりますと、ウクライナのゼレンスキー大統領が28日に訪米。

 アメリカと鉱物資源などに関する協定に署名することを望んでいるといいます。問題は合意の条件です。

 アメリカは当初、天然資源による収益のうち5000億ドル、約75兆円分の権益を要求していました。

 これをウクライナ側が拒否すると、トランプ大統領は…。

トランプ大統領 「ゼレンスキーは選挙なき独裁者だ。早く動かないと国がなくなるぞ」

 ウクライナが求めているのはアメリカによる安全保障の確保です。

ウクライナ軍将校 「屈辱的な形での和平は受け入れられない。そんなことのために戦ってきたのでも、仲間を失ってきたのでもない。そんなことのために領土も鉱物資源も主権も引き渡すことはありえない」

 イギリスのフィナンシャル・タイムズはウクライナ政府関係者の話として、アメリカが5000億ドルの権益に関する要求を取り下げたと伝えています。

 ただ一方、取引案には安全保障の確約も盛り込まれていないといいます。

■安全保障なし それで大丈夫?

 ただ、希少資源の権益をアメリカに渡すだけの結果にはならないのでしょうか。

筑波大学人文社会系 東野篤子教授 「アメリカを引きとめ続けておくためということで間違いないと思う。ロシアがこの交渉に手を出してくる隙を与えたくなかったんだと思う」

 ロシアのプーチン大統領は24日、アメリカに対して共同で資源開発を行う考えを示しています。そこには不法に占領しているウクライナ領の資源も含まれます。

筑波大学人文社会系 東野篤子教授 「アメリカの後ろ盾を得たうえで、ロシアがこの問題に口を出すことを阻んだということ。将来的にアメリカが安全の保障をウクライナに提供できるような措置をこれから2カ国で考えていくようなものが盛り込まれたんだと思う。ウクライナは、この協定を慎重に慎重を期してアメリカのちゃぶ台返しがないように細心の注意を払いながら交渉していく可能性があると思う」