大船渡市の山火事で、避難指示が続く地域では今も自宅に帰ることができません。そんな中、大船渡市は山火事の「鎮圧」を宣言しました。 ■“立ち入り制限”カメラ捉えた深刻爪痕

「ここまで来てるじゃん。燃えている。燃えている。」 9日、地元の消防団が撮影した、岩手県大船渡市赤崎町の様子です。 「わわわわわ…」 集落も、家の土台だけを残して、焼け落ちていました。さらに進んだ先でも。焼けた建物のすぐそばには、被害を受けていないようにみえる家もあります。消防団の車が何台も集合し、水を吸い上げ、消火活動に備える様子も。その後、消防団員らは、山林の中へと向かいます。急な斜面を火種が残っていないか、確認しながら登っていきます。行く手には、山火事で黒焦げになり、倒れたと見られる大きな木が転がっています。消防団は木の内部がまだ燃えていることを確認。すぐさま消火活動にとりかかります。 今回の大規模な山林火災は、当初、赤崎町で発生後に延焼し、この日は12日目でした。3日に撮影された赤崎町の映像では、林の中で枯れ葉や下草が燃えて、火が広がっていく様子がわかります。8日に撮影された映像では、もともと住宅があったのでしょうか、道路沿いに建物が焼け落ちたような跡が確認できます。 外口地区では、ほとんどの建物が焼け落ちた集落も。山側には、黒く焦げた木々も映っています。ここから飛び火して被害は拡大したのでしょうか。こちらの写真でも、焼け落ちた建物の先に、黒く焼けた樹木と山肌を見て取ることができます。大船渡市は、住宅など建物への被害はこれまでの78棟から大幅に増えて、少なくとも210棟とみられると発表しました。 ■震災と山火事 双方被害の消防団員

(大船渡市消防団 藤原淳・第5分団長)「山に入って火種を探して歩くという格好になると思います。」 新たな延焼が確認されていないことなどから、地元の消防団も活動を再開しました。中には、今回の山火事と、東日本大震災の津波の両方で自宅に被害を受けた人もいます。 (自宅が被災した 袖野雄さん(45))「ここですね、家があったのは。がれきみたいなのがある辺り。」 Q.東日本大震災でも被害を受けた? (自宅が被災した 袖野雄さん)「全壊という感じで、(建て直したが)正直、家のローンとかもまだまだあるので。次、建てられるかなという不安は正直ありましたけど。子どもたちが今まで通り同じ学校に通いたいし、同じところにいたいということだったんで、同じ場所で再建に向けて進んでいこうかなというところですね。」 自宅を失いながらも、消防団員としての役割は果たしたいと言います。 (自宅が被災した 袖野雄さん)「どこまで火が来たのかとか、これから安全に戻れる方向に向かえるのかというのを、改めて確認をしていきたいと思います。」 避難指示は、10日の正午までにすべての地域で解除する見通しです。 ■避難10日でやっと帰宅「バンザイ」

9日、新たに大船渡市赤崎町蛸ノ浦地区を含む4地区の避難指示が解除されました。 (志田久吉さん(76))「バンザイだ!バンザイ!」 この日解除された地区に住む志田さんは先月27日から1週間以上に渡る避難生活を余儀なくされてきました。 Q.疲れも溜まったのでは? (志田久吉さん)「寝られなくてね、でも(避難所で)贅沢は言ってられないから…」 Q.家が何事も無く良かったですね 「安心しました」 これまでに、山火事で大船渡市の9%にあたる約2900ヘクタールが焼失。 ■震災乗り越えた“奇跡の船”で養殖場に

8日、避難指示が解除された三陸町の漁港で、船を係留する漁師がいました。ホタテなどの養殖をする熊谷優汰さん、27歳。 (ホタテ漁師 熊谷優汰さん(27))「これで海の方もひと安心ですね、とりあえず。船まで持ってこられたので」 炎が迫る中、熊谷さんらは船を守ろうと、別の漁港に船を避難。取りに行っていたのです。弟の建汰さんと兄弟2人で、この船を使って漁をする熊谷さん。船は祖父から3代に渡って受け継がれたもの。この船には14年前、こんなことが起きていたといいます。 (ホタテ漁師 熊谷優汰さん)「この船がちょうど津波で流されたんですけど、なんとか無傷で、このままの状態で沖に流れてて」 あの日、16mを超える津波がこの地区を襲いました。壊滅状態の港。熊谷さんの祖父たちが使っていた施設や漁具など、すべてが流されました。 Q.奇跡的だったんですね (ホタテ漁師 熊谷優汰さん)「ですね、何とか無事に助かったから」 この船で弟の健汰さんは、火災発生から2週間ぶりにホタテの養殖場へ向かいました。 (ホタテ漁師 熊谷建汰さん(26))「(ホタテが)死んでいるのか生きているのかもわからないし、施設もどんな状況なのかもわからないので…」 養殖場は港の沖合3kmの地点。年間約5トンのホタテを養殖しているといいます。 「貝がついていますねぇ」 成長が早く、身が厚いのが特徴の“三陸のホタテ”。気になるのは生育状況です。 (ホタテ漁師 熊谷建汰さん)「結構小さいですね。まだまだもっと貝柱というか、でかくなりますね」 Q.山火事の影響は? 「なさそうな感じはしますね」 ■“海の栄養”に影響?カギは「森林再生」

しかし熊谷さんは、不安は残ると話します。 (ホタテ漁師 熊谷建汰さん)「火事で元々あったやつ(山林)がなくなってしまったので、(海に)来ていた栄養がなくなってしまって、ホタテ、ワカメ、カキ、ホヤとかが成長できなくなる」 ホタテやカキなどは、山林から流れ出す養分を含んだ水が育む、プランクトンなどを食料として育ちます。こうしたなか起きた、大規模な山林火災。森林再生の専門家は… (東京大学・先端科学技術研究センター 森章教授)「なかなか元の森林の機能を果たす、それを期待することは無理だと思います。(山林の)保水とか栄養面の供給とか土壌の流出防止とかを考えたときには、人が介入して森林に戻すということが必要になってくるんだと思います」 3月9日『有働Times』より