医療的ケアが必要な子どもを持つため、仕事をすることが難しい親たちが働く仙台市泉区のカフェを中心に人々のつながりが生まれています。働ける喜びを胸に歩みだした親たちの、新たな日常です。
2024年4月にオープンした仙台市泉区のカフェで働くのは、人工呼吸器や胃ろうなど日常から医療的なケアが必要な子をもつ親たちです。子どものケアのため、働く事を諦めていたこともありました。
高橋邦子さん「お休みをしょっちゅう取らなきゃいけない、急なお休みももらわなきゃいけない。果たしてそれで大丈夫だろうか、会社にご迷惑をお掛けするんじゃないかって一歩を踏み出せないでいました」
仙台市泉区に住む高橋邦子さん(56)の次男、幸太郎さん(25)は生まれつき脳性まひがあり、自力で体を動かすことや会話ができません。食事は、胃に直接栄養を届ける胃ろうで補給します。たんが詰まると呼吸困難になるため、定期的な吸引も欠かせません。
高橋邦子さん「放っておくと、たんが詰まって呼吸が止まります。なので取らなきゃ取らなきゃって。不便だけれども不幸ではないなっていう。やっぱり笑えば可愛いし大きくなればうれしいし」
高橋邦子さんは会社員の夫と幸太郎さんの3人暮らしです。週に5日、日中は預かり施設を利用しその他の時間はヘルパーにも頼りながら夫婦で世話に当たっています。
午前9時半、車で幸太郎さんを施設に送り届けた邦子さんが向かったのは、隣に併設されたカフェ・ドゥ・チルミルです。2024年から店員として働き始めました。
カフェ・ドゥ・チルミルは付きっきりの世話で孤立しがちな親が社会参加できる場所を作ろうと、2024年4月に仙台市の社会福祉法人が開設しました。
社会福祉法人あいの実久保潤一郎専務理事「お母さんたちが働きたいけれども働けないという状況をずっと聞いてきました。何とか働く場所を作れないかということで、カフェの企画につながりました」
カフェでは、交代で5人の女性が勤務しています。同じ境遇を抱える親同士に新たな接点が生まれ、情報を共有する場所にもなっています。
邦子さんはこれまでも幸太郎さんを施設に預けている間、働こうと考えたことがありました。
高橋邦子さん「お休みをしょっちゅう取らなきゃいけない、急なお休みももらわなきゃいけない。果たしてそれで大丈夫だろうか、会社にご迷惑をお掛けするんじゃないかって一歩を踏み出せないでいました」
カフェでは、隣の施設に子どもを預けながら働けるため安心して仕事に集中することができます。店のコンセプトはアウトドア体験です。客が自分で調理するため、店員との間に自然と会話が生まれます。
高橋邦子さん「今までどうしても自宅にいることが多かったので、お客様と色々お話しすることができてすごく社会が広がりました」
宮城県で医療的ケアを必要とする人は792人います。国の調査では、家族の約半数が社会から孤立していると感じると回答していて、日々の生活で行いたいことは9割近くが希望する形態で仕事に就くと答えています。
3月23日、カフェでは医療的ケア児を抱える親子を対象とした交流イベントが開催されました。初対面の親子4組が参加し、同じ境遇を抱えた参加者同士が子どもの状況や抱える悩みを語り合うなど、新たな交流が生まれました。
参加者「カフェの先輩ママさんにもお話を伺えて、子どもたちも楽しく過ごせたので良かったです」
高橋邦子さんは幸太郎さんが体調を崩し、スタッフとして参加することはかないませんでした。
高橋邦子さん「発熱したので行けなくなりましたと連絡しても、全然大丈夫です、お大事にしてくださいとお返事がすぐ来たし、皆さんシフトを変わっていただいたりで」
オープンからまもなく1年、カフェを中心に生まれるつながりは大きく広がっています。
社会福祉法人あいの実阿部美穂さん「カフェの仕事をしながらお悩みを持って来る方に寄り添って接客をされているので、カフェで働くお母さんたちの存在は非常に大きいと思っています」
現在は幸太郎さんの入院に付き添っている邦子さん、カフェの仕事はお休み中ですが理解してくれる職場のありがたさを感じています。今後は同じ悩みを持つ親に寄り添う存在になりたいと話します。
高橋邦子さん「大丈夫だよ、不便だけど不幸じゃないよ、そこですね。お母さん同士の情報がすごく大事なので、悩んで泣いているお母さんに何か話せればと思っています」
働ける喜びを胸に母親たちは前を向いています。