インバウンドが急増するなか、導入の動きが広り始めているのが「二重価格」です。さまざまなメリットの一方で、賛否の声も。(4月26日「サタデーステーション」OA)

■混雑目立つ京都市バス 導入を検討

物価高の中でも好調なのが、インバウンド消費です。今年日本を訪れた外国人は過去最速で1000万人を突破し、消費額は去年より3割近く増加したといいます。ただ京都駅前のバス停は行列です。

普段バスを利用 京都市民 「今日も2台か3台待たないといけないですね。地元民が疎外されている感じがせんこともない」

そこで対策として京都市が導入しようとしているのが、市バス運賃の「二重価格」です。相対的に市民を割安に、市民以外を割高にすることを検討しているといいます。

京都市交通局企画総務部 中本倫生担当課長 「混雑緩和がはかれるかはちょっと難しいかもしれないが、観光が市民生活の豊かさにつながっていて、観光客が来ることを受け入れる気持ちを作ってもらえれば」

■飲食店や注目のテーマパークでも

こうした「二重価格」は徐々に広がり始めています。渋谷にある海鮮バイキングのレストラン。

報告・朝倉有香ディレクター 「こちらには日本在住と、日本語が話せる人の価格と書かれています」

日本語で書かれた価格の方が、英語で書かれた価格より一律1100円安く設定されています。その理由は。

海鮮バイキング玉手箱 米満尚悟社長 「(外国人客への対応に時間がかかると)割を食うのは誰かというと日本人のお客さん。呼んでもスタッフ来ないじゃないかと。少しでもその感情を抑えてもらうために日本人の方を安くしている」

3か月後にオープンを控える注目のテーマパーク、「ジャングリア沖縄」でも。

25日に販売を開始したチケットは、国内在住者向けが、やや価格を抑えた6930円(税込)。非国内在住者向け一般価格が8800円(税込)となっています。価格が2000円ほど高い背景には、言語対応などの点が考慮されているといいます。

■導入に賛否も…姫路城は“軌道修正”

「二重価格」導入にあたっては、賛否の声も―。来年の3月から入城料金が変わるのは、世界遺産の姫路城です。

オーストラリアからの観光客 「外国人に追加の料金を払わせることは悪いとは思いません」 台湾からの観光客 「少し高いのであれば大丈夫ですが、2.5倍の差は高すぎると思います」

昨年度の入城者のうち、3分の1が外国人観光客です。当初市長は、オーバーツーリズム対策として、「外国人観光客」の料金引き上げを検討すると発言していましたが、その後、軌道修正。市民は現状の1000円に据え置き、市民以外を2500円へ引き上げます。城の保全整備や維持管理等に使われるといいます。

東京からの観光客 「高いけどしょうがないかな、これを維持していくにはって思いました」

専門家は。

観光社会学に詳しい 文教大学国際観光学科・中井治郎専任講師 「外国人観光客がたくさん来ている状況なのに日本人観光客しか来ていなかった時と同じ料金体系でいわゆるペイができる(採算がとれる)のかということですね。彼らの力を借りて地域資源なり文化財を守っていくといういろんな仕組みを作っていくのは大事かなと」

■海外では大胆な価格差も ピラミッドを取材

そこで私たちは海外の取り組みを取材。去年1700万人以上の観光客が訪れたエジプト、世界遺産のピラミッドでは。

報告・松本拓也記者 「価格表には外国人は700ポンドなのに対して、アラブの人たちは60ポンドと表記されています」

「外国人」はおよそ1970円、アラブ諸国を含む「自国民」はおよそ170円、その価格差はなんと11倍以上です。こうした「二重価格」は、インドのタージマハルやカンボジアのアンコールワットなどで行われています。

日本からの観光客 「差額はすごく大きいと思ったんですけどこの価格を払ってでも見たい」 アメリカからの観光客 「地元の人も来られるようにするには適切な価格設定だと思います」