ハリウッドスターも愛用する靴を作る、宮城県柴田町出身の職人についてです。繊細な技術が施された靴からアート作品まで手掛けています。
柴田町出身の靴職人、三澤則行さん(42)。東京にある工房で、お客さんから注文を受けた靴を1足1足手作りしています。
靴職人三澤則行さん「世界の中で最高の素材を使って、これだけ手間をかけてというか、しっかり作っているので」
三澤さんの靴はその技術が高く評価されていて、宮内庁に納めたりハリウッド映画の俳優や監督などが愛用したりしています。
2021年、東京オリンピックの開会式でパフォーマンスした仙台市出身のタップダンサー、熊谷和徳さんが履いていた靴も三澤さんが作りました。
靴職人三澤則行さん「心から感動したというか、こんな素晴らしいパフォーマンスする方いるんだ。そのパフォーマンスの1%でも力になれるような仕事があるんだったら、本当に幸せだろうなということで、熊谷さんにお願いして作らせてもらうことになったんですけれども。『もうこれ以外履けません』っていう言葉いただいた時は、うれしいっていうか、本当に安心しましたね」
三澤さんが靴職人を目指したのは、大学3年生の頃。
靴職人三澤則行さん「ちょうど就職活動で悩んでいた頃、通学路に靴屋さんがオープンした。靴好きだったので、どんな靴売っているのかなと思って行ってみたら、衝撃を受けるくらい自分の知らない世界の靴があって、何よりもその美しさに衝撃を受けたんですよね」
三澤さんは仙台市の大学を卒業後、東京の専門学校で靴作りを学び浅草やオーストリアで6年間修業し、2011年に工房を立ち上げました。
これまで作った靴は約1000足。三澤さんの靴の特徴はその繊細さです。
吊り込み、という客の足に合わせて作った木型に革を密着させる作業です。ペンチで強く革を引き、木型に釘で固定します。
靴職人三澤則行さん「引き加減間違えるとへたってしまったり不具合の原因になるので、何万回屈曲しても一生履けるような、そんな状態にするために引き加減もこうやって、左手でチェックしながら引いている」
革を立体的にして靴の形にしていくという、技術力と経験が必要な最も重要な作業です。
吊り込みが終わると、次はスクイ縫いです。麻糸に松脂とごま油を煮たものを塗り、その糸で中底など3枚の革を同時に縫います。。
靴職人三澤則行さん「糸が針金みたいに強靭になりますね。糸に対して防水効果、あとは腐りにくくするっていう効果があります。なので、一生ものの靴を作るっていう意味では欠かせないですね。もし1ミリ違いが出てしまったら、本当に僕の中ではミスですね。なので、1ミリも違わないようにっていうのは、最低条件として仕事してますね。世の中で一番良い靴を納めたいなっていう、その気持ちのみですかね」
機能と美しさを兼ね備えた三澤さんの靴は、履く人を魅了します。三澤さんと25年来の友人で、栗原市と仙台市でジムを経営する後藤聡さんは、2021年夏に三澤さんに靴の制作を依頼。6月に完成しました。
後藤聡さん「ジャストフィットする、そうすることで下半身からも整っていく感じで、もう動くっている動作が楽しくなるというか、シャキッとするというか、そのくらいのパワーありますよね」
三澤さんの靴は、履くだけにとどまりません。2月靴の国際コンクールで優勝した作品、「足の巣(Foot’s nest)」。
靴のアート作品も制作する三澤さん。世界中で個展を開いていて、アーティストとしても高い評価を受けています。
靴職人三澤則行さん「職人として、10年やってきた靴作りの延長線上なんですよね。人によっては全く違うことやっているような捉え方する人もいるんですけど、僕としては全く一緒で、実用的な靴、その美しさをちょっとこう分かりやすく、大きく表現しているのが、僕の中ではアート作品ですね」
今、三澤さんは、新しい人材の育成に力を入れています。三澤さんの靴作りの教室には、趣味で靴を作る人から職人を目指す人まで77人の生徒が在籍しています。
靴職人三澤則行さん「僕自身、たくさんの人から靴作りを教わって今があるので、自分が持っているものであれば、全部教えるのが筋かなと思います」
繊細な技術と靴を美術品として捉えるアイデア。そして、靴にかける思い。三澤則行にしか作れない靴を生み出します。
靴職人三澤則行さん「自分の人生を懸けて、靴作りに真摯に向き合って取り組んでいく、24時間体制で靴のことを考えるっていうのが、当たり前のことなんじゃないかなとすら自分では思ってますね。そのくらい幸せな仕事に巡り合えているので、このまま頑張り続けたいなと思ってます」