宮城県石巻市雄勝町で始まった、漁村留学です。都市部に住む小中学生が、1年間親元を離れ共同生活を送りながら地元の学校に通う取り組みです。2022年4月に雄勝にやって来た中学生たちが、間もなく旅立ちの時を迎えます。

 石巻市雄勝町。漁港で釣りをしている中学生たち。大阪府出身の中学1年生、参河遼さん。神奈川県出身の中学1年生、川村貴羽さん。東京都出身の中学2年生、安達遥さん。都会で生まれ育った3人は、2022年4月から雄勝町で漁村留学をしています。
 参河遼さん「家事とかを自分たちでやることを通して、生きる力とかそういうのが身に付いたと思います」
 川村貴羽さん「やっぱり自立というか、料理とかは前より断然できるようになったと思います」
 安達遥さん「人がすごい優しくて、自然に囲まれてその自然と生きていく町だなと思いました」

 石巻市雄勝町での漁村留学は、廃校になった小学校を活用して自然体験プログラムを提供している公益社団法人モリウミアスが2022年度から始めました。
 3人は、モリウミアスの職員と一緒に共同生活を送っています。掃除や洗濯、料理や風呂たきなどは、全て自分たちで行わなければなりません。

 漁村留学も間もなく1年。3人ともこの暮らしにだいぶ慣れてきました。学校から戻ると早速風呂たき。
 川村貴羽さん「得意ではないですが、コツはだいぶつかんできました。最初よりは多分(火を)付けるのは早くなった気はします」

 そして料理も。この日、主菜とサラダを担当するのは遥さん。レシピを見ることもなく、冷蔵庫にある食材や調味料を巧みに使って作っていきます。
 遼さんは味噌汁を担当。
 参河遼さん「あくを取っているのではなく、ちょっと水が多過ぎたので」
 手慣れてきたとはいえ、まだまだ失敗することもあるようです。

 「Q.1年間で誰が一番料理がうまかった?」
 川村貴羽さん「微妙じゃない?」
 安達遥さん「貴羽」
 スタッフ「でも最近のポテンシャルの高さは遥だよね?」
 安達遥さん「ノーレシピ」
 スタッフ「何がすごいってデザートすら(材料の重さを)測らない」

 漁村留学は基本1年間のプログラムですが、延長することもできます。遼さんと遥さんは、3月いっぱいで漁村留学を終え雄勝町を離れますが、貴羽さんはもう1年続けます。
 参河遼さん「貴重ないろんな体験を1年を通してできて楽しかったです」
 川村貴羽さん「特にあんまり深く考えていないんです。(実家に)冬休みに帰った時に、雄勝の方が楽しいかなと思って何となく残りました」

 3月12日早朝。3人の姿は、雄勝町の桑浜漁港にありました。地元の漁師たちが水揚げしたメカブやワカメの処理を手伝うためです。
 地元の人たちとの交流は、漁村留学の中で大切にしていることの一つです。この1年、仕事の手伝いをしたり地元の人の家に泊めてもらったりして親交を深めてきました。
 雄勝町に住む永沼由紀子「(雄勝町には)こういう子どもたちが今いない。だから、いつでもみんなに声掛けてもらってるよね。地域の皆さんも本当に温かい目で見ているからだからさみしいんじゃない、みんな。本当に良いことだったと思いますよ。3人に来てもらって」

 子どもたちを見守ってきたモリウミアスの安田さん。この1年間で3人の成長を感じています。
 モリウミアス安田健司さん「3人が地域に出ることで喜んでくれる人がたくさんいるし、今回、遼と遥は旅立ちますけど、本当に感謝の気持ちが第一」

 たくさんのことを体験できた1年間。新たな門出が近付いています。
 川村貴羽さん「人と広く浅くじゃなく狭く深く関われるので、本当に大切な人ができるなって思います」
 安達遥さん「生活のこともそうだけど、こういう町があることも知れたし、雄勝という町を思い出したりして過ごせたらなと思う」
 参河遼さん「(この1年は)すごい濃縮されたいろんな体験が詰まった、人生においても全部の1年も大切だけど、それの中においてもすごいぎっしり詰まった宝物みたいな時間だったのかな」