福島第一原発の処理水を薄めて海に放出する計画について、設備面の準備は原子力規制委員会の検査を残すだけとなりました。放出の開始目標とする夏ごろが迫る中、漁業や観光関係者には風評への懸念が依然として残っています。
平山栄大カメラマン「処理水のトンネル掘削に使われたシールドマシンが船上に確認できます」
東京電力は26日、福島第一原発から沖合1キロの海上で、処理水を送る海底トンネルを掘った機械を引き揚げました。
これで放出設備の主な工事は全て終わり、28日にも設備全体の性能を確認する原子力規制委員会の検査が始まります。
政府と東京電力は2023年夏ごろの放出開始を目指していて、計画は大詰めを迎えています。
しかし、風評被害への懸念は宮城県にも依然残っています。
石巻市雄勝は、通年で生食用のカキが養殖できる全国でも数少ない漁場です。
この地区でカキやホヤなどを養殖し販売、輸出を行う水産加工会社では、処理水の海洋放出への懸念は依然、払拭できていないと話します。
海遊伊藤浩光社長「今後しっかりちゃんと責任持ってやってくれるかどうかですよね。
曖昧にせずに漁業者と向き合って話をして、それで決めていくっていう方向にしないと海を生業としてるものとしてはね、そこらへんちゃんとしないでやられると一番不安もあるし、生活ができなくなるっていうことがあるんで」
海洋放出に対する不安は、海のレジャー関係者にも広がっています。
震災後、休止が続いていた雄勝の荒浜海水浴場は、今シーズン13年ぶりに開設されることになりました。
震災前には多い年で1万人以上が訪れていた海水浴場だけに、地元からは不安の声が聞かれました。
荒地区高橋周一会長「風評被害が一番怖いですね。できるならタイミングが合わない方が良かったんですけどね。このシーズンとにかく無事に終われればいいなと思っております」
政府は、海洋放出の時期について規制委員会による検査結果とIAEA=国際原子力機関の報告書の内容を踏まえて判断する方針です。