近年、海水温の上昇で暖かい海の魚が急増しています。なじみが無いなどの理由で廃棄される低利用魚を活用する動きが広がっています。

 シュンギクやハクサイなど宮城県の食材をふんだんに使ったちり鍋には、近年宮城県の海で増えている魚が使われています。
 宮城県松島町のホテル松島大観荘では、旬の水産物を使った様々な料理を提供しています。和食を担当している佐藤晃浩料理長が注目している食材があります。
 ホテル松島大観荘佐藤晃浩和食料理長「マメフグが今揚がっているんですね。やっぱり多いのは南ですよね。九州。元々こっちではないですよね。あまり」

 三陸沖で水揚げされたショウサイフグは、九州など暖かい南の海に多く生息していますが海水温の上昇で宮城県の海でも増加しています。
 ショウサイフグを含むその他フグの水揚げ量は、2015年以降増加傾向で2019年には126トンに上っています。
 しかし、中にはサイズが小さいフグもあり、身が少ない割に調理の手間が掛かるため、これまではほとんど使われずに廃棄されてきました。
 ホテル松島大観荘佐藤晃浩和食料理長「こういうのが揚がるということは、こっちで今まで食べたことがない人たちがいっぱいいるわけですから、それをこっちで伝えられるというのは、食べてもらえるというのは面白いというか楽しみですよね」

ショウサイフグで新メニュー

 佐藤さんは、新しい食文化を作ろうと、7月からショウサイフグを使った新メニュー作りを始めました。西日本では定番のフグ鍋は、宮城県産の野菜と合わせることで地場の料理に仕上げます。
 このほか、淡泊なフグに合わせて梅肉やシソ、みそなどを挟んで揚げたてんぷらと一口で食べられる大きさを生かした唐揚げの計3品を試作しました。

 この日、大観荘を訪れたのは低利用の水産物の消費拡大に取り組んでいるフィッシャーマン・ジャパンの安達日向子さんです。新メニューの開発を共同で行っています。 
 大観荘で洋食と中国料理を担当する2人の料理長を呼び、フグを使った新メニューを試食しました。

 2人の料理長からお墨付きをもらった一方で。
 中国料理担当土屋吉則料理長「私なら少し下味をつけて衣を付けて揚げて辛いソースとか、色々ちょっとアレンジはできると思うんですけど」
 洋食担当佐藤純仁料理長「洋食でしたら、松島町はトマトも有名で松島トマトもあるので、ブイヤベースとかに変化させれば淡泊なフグもおいしく召し上がれるんじゃないかと思いますね」

 新しいアイデアも上がりました。
 ホテル松島大観荘佐藤晃浩和食料理長「ちょっとした期間でこれだけの変化ですから、もっとこれからまだまだ長くなりますからね。いろいろもっと出てくると思いますから。他の料理人たちもどんどん暖水系の魚を使ってくると思います。そういうのを勉強しながら私も勉強していきたいと思っております」
 フィッシャーマン・ジャパン安達日向子さん「取れる魚が変わってしまったこともそうですし、取れる時期も取れる量も取れる魚の個体の大きさも毎年大きく変化している。こういう柔らかい形で、まず水産業の問題であったり、温暖化の問題について少しでも興味を持ってくださったらなと思っています」

 暖かい海の魚を活用する動きは、教育現場でも進んでいます。仙台市宮城野区の仙台農業テック&カフェ・パティシエ専門学校の学生が調理していたのは。
 学生「チダイを使っています。タイの一種です」

 チダイは西日本など暖かい海に生息し、近年三陸沖で急増しています。水揚げ量は2015年までは10トンほどでしたが、2016年から増え始め2021年は352トンでした。しかし、身が柔らかく刺身に向かないことなどから消費が進んでいません。
 こちらの専門学校では、学生に食材への理解を深めてもらおうと6月に宮城県亘理町の魚市場で校外学習を実施しました。水産関係者から低利用魚であるチダイの課題を学び、チームに分かれて活用するアイデアを考えてきました。

 学生が作っているのはチダイのハンバーグです。子どもでも食べやすいように魚をすり身にして混ぜこみました。トマトベースのソースにもこだわりがあります。
 生徒「チダイのがらで作っただしです。未利用魚なので、無駄にはしたくないなって」

チダイで新メニュー

 学生が考案したのは、炊き込みご飯や混ぜそばなど計5品です。この日、宮城県の水産関係者らを招いて作った料理を食べてもらいました。
 県仙台地方振興事務所高橋義広所長「全体的に試食もさせていただいて、風味も良くて非常に食が進んだなという感じがしました」
 亘理町水産加工会社清水谷結香さん「麺ですね。現状、麺で商品を出している方はいないので、これはかなり新しいのではないかなと思って」

 学生たちは今後、販売にかかるコストや流通の基礎を学び、販売先や出荷量など具体的な検討も進めていきます。
 学生「売れない商品は、どこかで工夫して料理にすれば売れるようになる」「チダイは加工が難しいですけれどとてもおいしくて。もったいないなと思ったので、少しでもおいしさを生かせるような加工法でどんどん普及していければ良いなと思いました」