宮城県気仙沼市には、マグロ漁師を志す若者が次々に集まってきています。若者を海へ向かわせるきっかけは、インターネット戦略です。

 若者を中心に人気のスマートフォンのアプリ、TikTokに掲載された20秒の動画です。いいねは6000を超え、若手漁師へのエールが並びます。

 マグロなどの遠洋漁船が出入りする気仙沼港では、マグロ船の仕事を目指す若者が後をたちません。仕掛け人は、船のオーナーでつくる宮城県北部船主協会の事務局長、吉田鶴男さんです。

 この日は気仙沼市のスーパーを訪れました。
 吉田鶴男さん「こんなに食えねえなってレベルで入れてください」
 小型のカメラを向けるのは、半年間の漁に出る新人が飲み物やお菓子を爆買いして準備する様子です。TikTok向けの動画です。
 吉田鶴男さん「TikTokは難しいね。30秒で逃げ切らないと見てくれない」

配信動画の撮影

 約10万円分購入しました。出港前の漁師の爆買いは、吉田さんの鉄板コンテンツです。撮影した映像は後日、スマホで編集します。
 TikTokに投稿した動画は、アップして数日で150を超えるいいねが付きました。

 気仙沼市出身の吉田さんは遠洋漁船に乗る若者を集める、言わば新人漁師のリクルーターです。TikTokだけではなくブログやYouTubeを活用し、漁師の仕事に興味を持ってもらうことで、毎年15人から20人の新人を呼び込んでいます。

 こちらもブログを読んだ1人です。初めての出港を前に船内を見学しています。
 船長「初めて来て個室は破格の待遇だよ」「ありがとうございます」
 若い人材に期待は高まります。
 船長「できれば長く乗ってほしいですね。長く乗って資格取って私の代わりになってくれれば、私も安心して辞められますよ」

 農林水産省によりますと、宮城県の漁業従事者の数は2008年からの10年間で3割以上減っています。
 吉田さんが、ネットに力を入れるようになったのは2012年です。東日本大震災もあり漁師が減る中、目を付けたのがスマホの普及でした。
 宮城県北部船主協会吉田鶴男さん「自転車で海まで行って船を巡っていったら、若い船員がスマートフォン。お金があるから買っちゃうんですよね」

スマホに目を付ける

 遠洋漁業ならではの魅力もアピールします。肉体的にはきつい仕事ですが、1年目で年収500万円前後で順調にいけば10年のうちに年収1000万円に達し、海にいる間は家賃も光熱費もかかりません。
 若手漁師「高校卒業して(マグロ船に)すぐ乗ると、周りの人たちよりは絶対稼げますからだいぶ魅力はあると思います」「一言で言うときついですよ。本当にきついです」

 新人の漁師が半年間の漁に出る日がやって来ました。港には吉田さんの姿もありました。
 宮城県北部船主協会吉田鶴男さん「船酔いどうかなとかなじめるかなとか、息子を送り出すみたいな感じなので。(船が)沖まで行ってしまえば、あと次の若い人って感じになるんでしょうけど、見えているうちはひたすら心配。これが見えなくなっちゃうとあとは次の人の準備。続けるためにも若い子を育てていかないと」