国体として長年親しまれてきた国民スポーツ大会について、全国知事会の会長を務める村井宮城県知事が見直しを提起したことが全国に議論を巻き起こしました。各地の知事の反応、そして国民スポーツ大会に寄せる競技者の思いです。

 8日、定例会見で新年度の取り組みを問われた村井知事の発言が全国に波紋を広げました。
 村井知事「あくまでも私個人的な考え方として、廃止も1つの考え方ではないかなと思っております。今と同じやり方を3巡目もやることについて、本当にそれがいいのかどうか1回ここで立ち止まって良く考える必要があるのではないかなと」

 国民体育大会から名称が変わった国民スポーツ大会のあり方について、廃止も含め見直す必要性があると訴えました。
 国民に広くスポーツを普及し国民の体力向上を図ることなどを目指して、国民体育大会は戦後まもない1946年に第1回大会が開催されました。47都道府県の持ち回りで開催していて、現在は2巡目です。2024年は名称が国民スポーツ大会に変わって初めてとなる大会が、佐賀県で開催されます。

 第1回の国体では競技数24参加者6800人余りでしたが、近年は37競技2万人以上にまで広がっています。国体は、開催地のスポーツ施設整備が促進してきました。宮城県では2001年に2回目の国体が開催され、宮城スタジアムをはじめ仙南総合プールや長沼ボート場などが整備されました。

村井宮城県知事

 一方で、村井知事が見直しを求める大きな理由は財政負担の大きさです。
 村井知事「財政的な負担は大きいですよね。国体は全選手団の費用を各都道府県持ちでやっているんですよね。ですから毎年旅費だけでも相当かかっているということです」

 宮城県によりますと、2022年の栃木国体では冬季大会を合わせて選手団総勢658人を派遣し、交通費や宿泊費など6300万円近くを支出しました。九州など遠くの地域での開催では、選手の派遣費用は1億円を超えます。
 10月に大会が開催される佐賀県では、関連経費は累計で157億円に上りスタジアムやプールなど会場の整備費に540億円がかかっています。

 「廃止を含めた見直し」。村井知事の発言に全国の知事が反応しました。
 達増拓也岩手県知事「全国の都道府県で、今までのような形での開催というのは極めて困難であろうと思います」
 吉村洋文大阪府知事「見直すことには賛成です。毎年開催することに関して見直した方がいいと思います。廃止とまでいかなくても、関西地区や九州地区といったブロックで協力して数年に1回行うのが良いだろうと思っています」

 一方で、競技者の視点から国体をめぐる議論には競技団体との意見交換が欠かせないとの指摘もあります。
 福田富一栃木県知事「日本で最高峰の大会でありますのに、大変だからお金がかかるからやめると、そういうことだけで中止に向かってしまうことだけはあってはならないと思います」

競技者の受け止めは

 こうした議論を競技者はどのように受け止めているのでしょうか。宮城県代表として国体で5回の優勝経験を持つ、古川学園の女子バレーボール部です。高校バレー界で国体は、春高バレーやインターハイと並び3大大会に位置付けられる重要な大会です。
 音川南季主将「私たちも含め全国の全ての高校生がインターハイ、春高、国体と3冠を取るつもりで高校選びだったり練習を励んでいると思います。自分たちにとっての目標が1つ消えてしまう感じなのでとても悲しい」

 チームを率いる岡崎典生監督も国体の意義を強調します。
 岡崎典生監督「国体は選抜チームでも出られるので、強豪校以外の子でも高校で伸びしろのある選手が選抜で選ばれて全国大会を経験できるので、そういった意味でもインターハイや選抜大会と違った意味でモチベーションの上がる大会だと思っています」

 そのうえで、岡崎監督は今後の議論についてこう願います。
 岡崎典生監督「結局は経費の問題が大きいと思います。皆さんで存続できる方向で、国も協力的に良心を持って存続してほしいと思います」

 22日の会見で村井知事は、各都道府県に行ったアンケートでは大会の見直しを求める声が多く上がっていると明らかにしました。
 村井知事「出てきたもの(アンケート)を見ると、さすがに廃止という意見はございませんが大幅に見直してほしいという意見が方向性としては出ていると思いました」

 今後、全ての都道府県のアンケート結果がまとまり次第、担当の知事らと大会のあり方についての提案のたたき台を作り、日本スポーツ協会と協議をするとの見通しを示しました。
 村井知事「いいんじゃないかという方もおられたり、あるいはスポーツ関係者の方から、急に、というような声もありました。非常に関心の高い問題なんだなということがよく分かりました」