オリンピックの開幕を目前に控えたパリ。

会場は、パリ中心部に集中。観光名所を使ったコンパクトなオリンピックを目指し、これまで着々と準備が進められてきました。

全競技会場のうち95%は、既存のものや、仮設の施設を利用します。

パリのメインストリート、シャンゼリゼ通りを歩くこと約10分。フェンシングの会場にもなっているグラン・パレに着きます。もともと1900年開催のパリ万博の会場として建てられました。

グラン・パレから少し歩くと、コンコルド広場です。中央にそびえるのは『クレオパトラの針』と呼ばれる古代エジプトで作られたオベリスク。数千年の歴史が、大会初の種目となったブレイキンの試合を見守ります。

約1500万人が訪れる見込みで、チケット販売数は、すでに870万枚以上と、今までで最高の売れ行きです。

街の真ん中で開催する大会だからこそ、テロ対策が最大の課題です。警察官は、世界各国から応援に駆け付けていて、警察犬まで海外出張で任務にあたっています。

特に厳しい警備体制の場所がありました。 大会期間中のパリ市中心部は、車両の通行は禁止。さらに、厳重なテロ対策として『SILT=テロ警戒区域』と呼ばれるエリアができています。住民さえも許可証がないと出入りできない場所です。

そのため、市民生活に影響を与えています。

テロ警戒区域内に住む人 「荷物を車に積めません。車庫が向こう側(SILT外)で、住居はこちら側(SILT内)なんです。荷物を積み込もうと思ったら、いつも使っている道路が固定バリケードでふさがっていて、通れませんでした。制約も多すぎて無理です」

区域を出入りするのに必要な許可証も行き届いてないといいます。

厳重な警備は、かき入れ時の観光業にも直撃しています。

セーヌ川の船上レストラン店長 「昼は15席しか用意できず、90%減です。今はマイナスに作用しています。でも、オリンピックは素晴らしいイベントなので、いい影響が出てくるはずです」

一方、決して有名な観光スポットではない『ドセ通り』が観光客でにぎわっていました。

なぜ、人が集まるのでしょうか。

日本人観光客 「本当はタクシーで来ようかなと思ったけど、セーヌ川を渡れないので。通ろうと思った道が通れなくて、いろいろ回り道して」

日本人観光客 「行けないところが、結構あったり、限定的ではあります。 (Q.エッフェル塔には行った)いまから向かいます」

セーヌ川を渡ってエッフェル塔に向かう人気の観光コースは、テロ警戒区域内のため、通行が難しく、う回路になるドセ通りに人が集中していました。

ドセ通りのレストラン店長 「大盛況です。売り上げは普段の倍近くです。7月14日(革命記念日)でも、こんなに混雑しません。先頭に立ってオリンピックに参加しているようで、休む暇もありません。金曜日が待ち遠しいです」

◆パリでのオリンピックは3回目となりますが、近年のオリンピックが抱える“危機感”も見え隠れします。

今回、全329種目もの競技がフランス国内35の会場で行われますが、うち13カ所と会場が集中しているのがパリ中心部です。

なぜ、中心部に会場を集中させたのか。

◆オリンピックの歴史に詳しい環太平洋大学の真田久教授に聞きました。

危機感が2つあるといいます。    まず、一つ目が、市民と五輪の距離。 コロナ禍が去って初めての大会という意味で、市民とオリンピックの距離感は、非常に大切な点だといいます。

パリオリンピックのテーマは『開かれた大会』。真田教授は「観光名所そのものを競技場にして、市民や街の中に溶け込むような大会と見せることで、より近くに感じさせ、関心を持ってもらう狙いでは」と話します。                                  さらに、真田教授は、オリンピックが抱える危機感として、スポーツへの興味が多様化したことなどによるオリンピックの若者離れを指摘します。

その危機感のあらわれが東京大会から始まり、今回、コンコルド広場で行われる“アーバンスポーツ”だといいます。今大会で正式競技となったブレイキンをはじめ、スケートボードなど、若者が身近に楽しめる競技を採用していますが、今大会のこの“場所”にメッセ―ジがあるといいます。真田教授は「コンコルド広場というパリの中心的な会場で実施することで若者たちが担う競技が“ど真ん中”であると印象付け、 東京大会からの流れを加速していく狙いがあるのでは」と話します。

「オリンピックは、その時代の人々にとって、開催する価値があると実感してもらい、若者が関心を持って新しいオリンピックを作り出していくことが持続可能にするポイント。その前例を示すことが、今後のオリンピックにとっても重要」と指摘します。