アメリカ大統領選まで100日を切りました。

ハリス副大統領の出馬表明後、苦しい戦いを強いられているトランプ氏は31日、全米黒人記者協会のイベントに登壇。このイベントでの人種差別的な発言が波紋を呼んでいます。

今回は、熱狂的な支持者に囲まれるいつもの集会とは、空気が違いました。

司会者(ABCニュース) 「あえて言いますが、あなたに『ここは場違いだ』という声が多くあります。非白人女性議員に『出身地に帰れ』と言ったり、黒人の地区検事に『けだもの』『狂信的』という表現を使ったり、黒人の記者を“負け犬”と呼んだ。あなたは黒人票を求めていますが、なぜ、あなたを信頼できると?」

トランプ前大統領 「これほど、ひどい質問のされ方は初めてだ。あいさつすらない。君はABCだろ?フェイクニュースを流すテレビ局だ。善意で来た私に失礼だ。私は、この国の黒人を愛している。彼らのために多くのことをしてきた」

問題の発言は、対抗馬となったハリス副大統領に質問が及んだときでした。

司会者(ABCニュース) 「ハリス氏は、黒人女性というだけで出馬していると思うのか」

トランプ前大統領 「いや、それは少し違うかもしれない。彼女は、ずっと自分はインド系であるとアピールしていた。数年前“黒人になり変わる”まで、黒人だとは思わなかった。インド人なのか?黒人なのか?私は、どちらであっても尊重するが、彼女は違うらしい。ずっとインド人だったのに、突然、黒人になってしまった」

黒人のアイデンティティーを都合よく利用していると批判したいようですが、実際のところ、ジャマイカ出身の父親、インド出身の母親の間に生まれたハリス氏は、黒人であり、アジア系というアイデンティティーを自任してきました。卒業したのも、歴史的に黒人の多いハワード大学です。

ハリス氏は、偶然にもこの日、同じく黒人団体のイベントに招かれていました。

ハリス副大統領 「分断と非礼に満ちたお決まりのショーでした。アメリカ人には、もっとふさわしい指導者が必要です」

ホワイトハウス・ジャンピエール報道官 「非白人として、この立場にいる黒人女性として、トランプ氏の発言は不快で侮辱的です。個人のアイデンティティーに物を言う権利は誰にもありません。ご本人が決めることです」

暗殺未遂を一気に追い風に変えたかと思いきや、バイデン大統領の撤退で一転。ハリス旋風にさらされているトランプ氏。リードしていた激戦州で逆転されたとの世論調査もあります。

黒人票を掘り起こすべく臨んだ場でしたが、墓穴を掘る結果となりました。イベントは1時間の予定でしたが、トランプ陣営の意向によって、34分で終了しました。

CNN政治コメンテーター 「ニュースにならなければ“ニュース戦”に勝てません。共和党大会での大成功も忘れ去られてしまって、トランプ氏は、再び、脚光を浴びようと、お得意の扇動的で、馬鹿げたナンセンス発言での巻き返しなのでしょう」