28日に開幕したパリパラリンピックのウクライナ代表選手にはロシアとの戦闘で左脚を失った元兵士がいます。戦禍のなかで開かれるパラリンピックへの思いを聞きました。

 試合に向けて練習に余念がない選手たち。シッティングバレーボールのウクライナ代表チームです。

 シッティングバレーボールは、下肢などに障害のある選手が座った姿勢でプレーする6人制のバレーボールです。

 エフゲニー・コリネツ選手(27)は、ウクライナ軍の衛生兵でした。去年3月、東部の激戦地バフムトで、ロシア軍の砲撃により左脚を失いました。

コリネツ選手 「敵から激しい砲撃を受け、一発が塹壕(ざんごう)に落ちました。ひざ上と左ひじに破片が当たり、ひじも大けがをしました」

 前線から搬送されたコリネツ選手は切断手術を受け、左脚すべてを失いました。戦場から遠く離れてもつらい記憶が蘇ることが度々あるといいます。

コリネツ選手 「ヘリコプターの音を聞くと、前線での体験がフラッシュバックして少し身震いします」

 軍に志願する前は、プロのバレーボール選手として活躍していたコリネツ選手。その経歴に目をつけたシッティングバレーボールのコーチがリハビリを兼ねてトレーニングに招待をしました。

シッティングバレーボール コーチ 「初めて彼を見た時、とても背が高いことが気に入りました。私たちのスポーツでは高身長が重要なんです」

 他の選手に比べてシッティングバレーボールの経験は浅いものの、ベテラン選手に引けを取らない活躍を見せ、パラリンピックの代表メンバーに選ばれました。

コーチ 「彼は明るく責任感のある人間で、こうした人物はチームにとって常に必要です」

 戦時下での練習は困難を極めました。空襲警報が鳴るたびに中断し、避難しなければなりません。

コーチ 「ドニプロでの合宿中、練習後に警報が鳴り、150メートル先にミサイルが落ち、爆発が起きました」

 安全な練習環境もなく十分な練習時間も取れないなかで迎えるパラリンピック本番。コリネツ選手は、困難を乗り越え全力でプレーする姿をウクライナの人たちに見せたいと話します。

コリネツ選手 「パラリンピックを通じてウクライナの人々に伝えたいのは、どんなに困難な状況でも決して諦めてはいけないということです」