東北電力は29日午後7時ごろ、東日本大震災以来約13年半ぶりに女川原発2号機を稼働させる予定です。事故を起こした東京電力福島第一原発と同型の原発としては、全国初の再稼働です。
女川原発2号機は東日本大震災で被災して運転を停止していましたが、2020年に再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に合格し、2024年5月に安全対策工事を完了させ9月に原子炉に核燃料を入れる燃料装荷を行いました。
そして東北電力は29日午後7時ごろ、核燃料の核分裂反応を抑えている制御棒を引き抜いて原子炉を起動し再稼働させる予定です。
東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型原子炉の再稼働は初めてで、被災した原発としても初めてのことです。
女川原発2号機は11月上旬には発電を、12月ごろには本格的に送電を始める営業運転を再開する予定です。
東北電力は女川原発周辺の放射線量を計測してホームページ上で公開しているほか、原子炉の運転が安定するまでの期間中は作業の進行状況を毎日公開するとしています。
女川原発2号機の再稼働について、宮城県民はどう思っているのでしょうか。仙台市や立地自治体で聞きました。
仙台市民「福島のことがあるのでね、ああいったことがもし起きたら、割と仙台は地震が多いので。無いとも限らないですねああいう事故がね」
「おそらくちゃんとプロセスを踏んでやっているんだろうから、容認するのが筋だと思いますけどね。ある程度必要なんじゃないですか」
「理論とか根拠に基づいて安心ですよというアピールはあってそれもそうなんだろうなとは思うのですけど、感情面では心配な面はありますね。説明は逐一責任として果たしていって欲しいと思いますね」
原発が立地する女川町と石巻市では。
女川町民「賛成反対じゃなく早く稼働してもらえれば、町民の皆さんも安心して電気が来るから大丈夫だと思います」
「本当に残念だと。避難計画にしたって全部机上のプランで実効性はありませんのでね」
石巻市市民「特に半島部が心配、しかも原発の先端の方にも居住地域があるので。災害、有事の時に避難するっていうのは、複合的な災害があっちこっちで起きてるもんで」
宮城県民の中には再稼働への賛否両方の声がありましたが、29日に原発周辺で抗議活動も行われました。
小笠原侑希記者
女川原発から北に約1キロ、宮城県女川町の小屋取漁港です。女川原発が見えるこちらの場所や原発の入り口などで、市民団体が抗議活動を行いました。
抗議活動には地元住民ら約30人が参加し、再稼働を中止するよう声を上げました。
参加者「冗談じゃないと思っていますよ。福島の事故からまだ13年ですよ」「聞く耳が無いのかなって。市民国民県民の声は一切聞いていない」
女川原発2号機では、2024年に入ってからも非常用設備が計画外に作動するなどのトラブルが度々起きました。
重大事故が起きた際に円滑な避難ができるかという懸念もあり、不安を抱えている住民は少なくありません。
能登半島地震では、至る所で道路が寸断されました。同じく半島部にある女川原発について、東北電力と国や自治体には再稼働後も徹底した情報公開に加え、最新の知見に基づいた避難対策の強化が求められます。
避難対策の課題となっているのが、避難道路の整備です。
牡鹿半島で整備中の大谷川浜小積浜道路は、女川原発のすぐ南にある大谷川浜地区から牡鹿半島の山を越えて半島の西側、小積浜地区へと抜ける道路です。
この道路が完成すれば東西の行き来がこれまでより10分短縮されますが、完成は2027年度の予定です。
女川町と石巻市の石巻女川インターチェンジを結ぶ国道398号石巻バイパスです。
現在の女川と石巻を結ぶ幹線道路はカーブや勾配、大雨による冠水などが課題となっていて、石巻バイパスは円滑な避難のためにはなくてはならない道路です。
しかし、軟弱な地盤であることなどを理由に道路の設計に時間がかかっていて、未開通の5.8キロの区間は着工の時期も決まっていません。
このように未完成の避難道路もあり、地元住民には不安が残されています。
女川原発2号機の再稼働に当たり、宮城県と立地自治体は地元同意していますが、専門家は地元同意は不十分だったと指摘しています。再稼働を機に将来的に原発に依存しない社会を目指すかどうか、住民投票などを通じた合意形成が必要だとしています。
女川原発2号機の再稼働をめぐっては、2020年に宮城県と女川町、石巻市が協議して再稼働に同意すると表明しました。
村井宮城県知事は、経済産業大臣に対して地元同意が得られたと伝えました。
ドイツの脱原発運動に詳しい東北大学の青木聡子准教授は、地元住民が合意したようにも見える地元同意ですが、地元の範囲や同意する主体は実は曖昧だとした上で、現在の地元同意は不十分だと指摘します。
東北大学青木聡子准教授「福島の事故を見ても明らかなように、ひと度事故が起こればその影響は広く及ぶ。望ましい状態としては、立地自治体とか周辺自治体だけではなくてより広い範囲の自治体を地元として設定して、意思表示の主体にするのが妥当なのではないか。首長と議会の判断という事が仰がれてきたわけですけれども、果たしてそれでその住民の意向が十分に汲み取れているのか」
原発に関しては、今回の衆院選でも政治とカネや経済対策の陰に隠れ重要視される争点にはならず、再稼働に反対するデモも日本では大きな政治勢力にはなっていないと言います。
青木准教授は、将来的に原発に依存しない社会を目指すかどうかについて住民投票などを通じた合意形成が必要だと強調します。
東北大学青木聡子准教授「原発で発電した電力、多少リスクはあるけども経済活動のためにある程度は使う社会にするのか。色々工夫をして、原発からの電力を使わないような社会にするのか。そこを本来は徹底的に合意形成しておく。今からでも遅くはないと思うので、それは再稼働を機にやってもいいと思います」