今年の春闘の賃上げ率は最新の集計で平均5.40%と去年から高い水準を維持しています。こうしたなか、アプリを活用して組合活動を活性化し、賃上げにつなげようという取り組みを取材しました。

■賃上げ加速へ「加入率9割超」

 皆さん給料、上がりましたか。

会社員(30代の人) 「(給料は)上がっている感じはするかな」 「毎年必ず上がってはいる」 「ベースアップすればいいのではないか。うれしいことですよね」

 今年の春闘、平均賃上げ率は5.4%。2年連続で5%を超える高水準です。しかし、働く人の7割を占める中小企業の賃上げ率は5%を下回り、大企業との格差は依然として埋まりません。

 街の声は厳しく…。

中小企業で勤務(40代の人) 「今年ちょっと物価上がっているから(給与を)上げてほしいということで、去年その分ちょっと上がったけど今年はどうかな。(会社には)上げてほしいとは言いました」

 賃上げ交渉を支えるのが労働組合ですが、組合への無関心が広がっています。組織率は年々下がり、去年は16.1%と過去最低を更新しました。

会社員(20代の人) 「(Q.労働組合に参加している?)参加っていわれるとしていない。どうなんだろう…」 「具体的には分かっていない」 「結構分かってない人はいっぱいいるような雰囲気は感じている」

 組合員が少なければ、会社への影響力も弱まり、賃上げ交渉も難しくなります。

■労組の活動 アプリで活性化

 そんな状況を変えているのが、スポーツ用品大手の「アルペン」です。

 社員およそ2800人のうち、2600人が組合員。加入率はなんと9割を超えています。

 その秘策が…アルペンが3年前に導入したのは、スマホやパソコンで簡単に利用できる労働組合専用のアプリです。

アルペン労働組合 中央執行書記長 岩崎真未さん 「こういうふうにタイムラインで色々な組合員が投稿したものや活動報告、平素で機関紙があるがクイズの投稿もできる」

 「いいね」や「スタンプ」も付けられ、普段SNSを使い慣れた若い世代もなじみやすい仕組みです。

岩崎真未さん 「リアルな組合活動の参加者はもちろん、活動の場になかなか来られない人でもスタンプを押してくれているとか、情報がリアルタイムに組合員に届けられるところは一つ強みだと思う。今、賃上げがどうなっているかというところは、しっかり早く伝えれらるというのはメリット」

 アプリの親しみやすさから、組合員の実に97%が利用。組合の活動への関心も高まっています。

組合員 「紙面よりスマートフォンのアプリで簡単に確認ができるので、以前より組合活動に興味が湧いたり、以前より確認しやすくなった」

 さらに、アプリには思わぬ効果も…。

組合員 「組合で補助金の制度があって友達家族と食事に行った時に補助金が出るので、それを使用した時に投稿したり。一緒に参加した人から『楽しかったですね』とコメントやスタンプが付いたり交流できます」

 こうした気軽なやりとりから、これまで関わりのなかった社員同士がつながり、新しいコミュニティーも生まれています。

 そして、アプリを通じて集まった声は賃上げ交渉にも確実に反映されています。

アルペン労働組合 中央執行委員長 石田理さん 「賃上げも労働条件を変えるベースになるのは組合員の声。どれだけの意見があってこういう要求をしていることを会社と相互理解して改善、賃上げできる環境が一番望ましい」