今週、ようやく店頭に並びはじめた備蓄米。政府は、さらなる追加放出も発表しました。なのに、コメの価格が…下がりません。なぜでしょうか? (サタデーステーション4月12日OA)

■都内の老舗コメ店 2年前から価格が1.7倍に…飲食店も「死活問題」

報告・畑中彩里ディレクター(12日 東京・杉並区) 「都内にあるコメ店ですが店の前には人だかりが出来ていますね」

サタデーステーションが訪ねたのは、東京・荻窪にある大正15年創業の老舗コメ店。12日は、毎月恒例の特売日です。ササニシキは2年前のおよそ1.7倍の価格に…

森田屋米店 森田ひろみ社長 「(コメの価格が)どんどん高くなっちゃって相場が…だから仕入れもできないのよね」

在庫もギリギリの状態でやっているため販売する量を制限しています。

常連客 「1カ月に2回は(買いに来ている)土曜日がね、いつも割引してくれるから…」

買い物客 「普段行っているスーパーでお米が売っていなくて。(Q.きょう特売日ですが、知っていました?)知らなかったです。ラッキーです」

価格が高騰し続けても“少しでも安く販売したい”という思いから今も変わらず、特売日を設けているそうです。

森田屋米店 森田ひろみ社長 「(特売は)もう20年くらいやっています(コメの価格が)高騰しているからといって自分のやり方というか。お店のコンセプトは崩したくないし、ちょっとでもお客様に還元したいという気持ちでやっています」

実は、全国のスーパーで販売されているコメの平均価格は13週連続で値上がりが続き、5キロあたり4206円と過去最高値を更新。これは去年の同じ時期と比べて2倍以上です。取材中に店を訪れていた松井さん。コメ店のすぐ近くで飲食店を営んでいますが価格の高騰は「死活問題」です。これまでご飯の大盛無料サービスをしていましたが半年前から有料にしたそうです。

東京Qeema 松井政貴オーナー 「なるべく負担なくお食事していただくということで(大盛りは)80円でやらせていただいております。これ以上お米の高騰が続きますと値上げもやむなくないかなと感じではありますね」

飲食店を経営する一方で、妻の政子さんと共に食べ盛りの息子を育てる父親でもあり、コメの価格高騰が大きな負担になっています。

中学3年の息子がいる松井政子さん 「息子が今、中3なんですけど、 食べ盛りなので やっぱりお米なしじゃかわいそうなので、息子が『食べたいな』って言ったら『いいよ』って我慢して『どうぞ』みたいな感じで譲ってあげます」

■“病院食ピンチ”ひと月に約40万円負担増

影響は、医療の現場でも…西東京市にある武蔵野徳州会病院。およそ300人の患者が入院しています。入院患者のため、毎日準備しているのが「病院食」。1食に使うコメの量は、およそ20キロです。

武蔵野徳州会病院 栄養管理室 土屋輝幸副室長 「今、ちょうど炊きあがりでしてこれで50人前です。おかゆの患者もいるので…」

患者に合わせて4種類の硬さのご飯を用意しているといいます。こちらの病院では、コメの価格を抑えるため業者からまとめて仕入れていますが、それでも、この半年で1キロあたり250円値上りし、毎月40万円ほど負担が増えています。

武蔵野徳州会病院 栄養管理室 土屋輝幸副室長 「毎食使う食材なので、非常に影響は大きいです。赤字のまま我慢して提供するって感じになります」

ご飯の代わりにパンや麺類に代用する案もありますが簡単には変更できない事情が…

武蔵野徳州会病院 栄養管理室 土屋輝幸副室長 「パンですと高齢の方が喉に詰まらせるリスクが高くなってしまうことと、入院患者さんの中には心臓疾患や高血圧の患者もおりますので塩分の計算が大変になってしまいます」

苦しい状況に立たされているもう1つの要因は病院食費用の上限です。1食あたり690円までと定められています。近年の物価高に伴い、国も病院食費用の基準を引き上げていますが、それだけでは病院食の赤字は解消できないといいます。

武蔵野徳州会病院 栄養管理室 土屋輝幸副室長 「今年4月に20円引き上げはされたんですが大きく値段が変わることはないので、 運営的には非常に厳しいです。金額は国の制度で決められていますので時代の流れに合わせて増額していただけたらと思います」

■備蓄米放出 なぜ値段下がらず?

高島彩キャスター: コメの安定供給に向けて政府は7月まで毎月備蓄米を放出することを決めましたが、スーパーなどでの店頭価格はなかなか下がらない状況があります。理由はどこにあるんでしょうか。

板倉朋希アナウンサー: 米の流通に詳しい宇都宮大学の小川真如助教にうかがったところ、「これまで放出された備蓄米の多くは外食産業であったり中食のほうに回っていて、スーパーなどの小売店などには十分に流れておらず、なかなか店頭価格が下がらないのではないか」ということでした。「もし本気で小売価格を下げたいのであれば、備蓄米は小売店に卸すというルールも必要なのではないか。また米の増産にも注目すべき」とおっしゃっています。

高島彩キャスター: コメの増産は必要不可だとは思いますが、国はこの現状をどう見ているのでしょうか。

板倉朋希アナウンサー: 農水省の発表では、今年のコメの生産量は14万トン増やす見通しになるということでした。実際に番組で取材をした茨城県の農家では、今年の収穫量を去年の330トンから1.6倍の530トンに増やすと言うことでした。

高島彩キャスター: こうしたコメの安定供給に向けた取り組み、柳澤さんどうみていますか。

ジャーナリスト柳澤秀夫氏: 注目しているのは、きのう政府が閣議決定した今後5年間の農業に関する基本政策。その中では今後5年間でコメの輸出量を現在のおよそ8倍に増やすということです。これは国内の需要がひっ迫、つまり不足した場合には海外輸出用のコメを国内に割り振り急場をしのぐ、ということなんです。

高島彩キャスター: これが出来ればすばらしいですけど、5年で8倍ですからね。

ジャーナリスト柳澤秀夫氏: いま米農家は高齢化が進んでいて、担い手が不足してきてるんですよね。さらに物価高が農家の経営を圧迫しているということなので、そういう事を考えると本当にこれができるのか。増産するためには、農家に対する幅広い支援策が必要だと思います。