災害から命を守る、もしもに備える知恵、津波の脅威から命を守るために震災後に整備が進められている津波避難タワーです。

 宮城県が2022年に公表した、日本海溝や千島海溝などで巨大地震が起きた際の津波の浸水想定によると、宮城県の死者は最悪のケースでは5000人に上ると推定されています。内閣府の推計では、津波避難タワーなどの整備を進めれば被害を8割ほど抑えることができるということです。

 井口亜美アナウンサー「東松島市の矢本運動公園内に新たに完成した、津波避難タワーです。建物は鉄骨でできていて、津波に耐える頑丈な造りになっています。近くに住む住民の方が、一時的に避難できる場所として設けられました」

 周辺に高台が無い東松島市矢本の海から2.5キロほどの場所に新たに設置されたのが、津波から逃れるための一時的な避難施設、津波避難タワーです。

 高さ13.2メートルの4階建てで、地震の大きな揺れや津波の衝撃にも耐える頑丈な柱になっています。入り口は普段は鍵が掛かっていて、震度5弱以上の揺れを感知すると自動で開錠され、すぐに避難することができます。

 井口亜美アナウンサー「自動で震度5弱以上で開くということですが、もし開かなかった場合は?」

 東松島市防災課稲垣邦危機管理官「アクリル製のパネルになっているので、突き破って鍵を開けていただく」

 介助が必要な人にも配慮され、階段の他スロープが設置されています。

 東松島市防災課稲垣邦危機管理官「段差を低めに造っていて、滑りにくい素材にしているので雨が降っても大丈夫」

 3月に発生した東日本大震災では厳しい寒さの中での避難となり、体調を崩す人も出ました。

 津波避難タワーには、そうした教訓が盛り込まれ屋内の避難スペースが整備されています。ここでは最大200人が津波が引くまでの一定期間滞在できるよう、様々な設備が用意されました。

 東松島市防災課稲垣邦危機管理官「椅子が開いて備蓄品を入れるベンチになっていまして、今入れているのが停電時のランタンです」

 ストレスに配慮して、部屋を分けることができるカーテンも準備されています。備蓄倉庫には食料や水の他、毛布や暖房器具も常備されています。

 東松島市防災課稲垣邦危機管理官「今のところ3日分くらい備蓄しています。あくまで避難場所ですので、水が引いた後は近くの避難所に移動していただいて避難していただく」

 更に屋上も避難スペースになっています。 東松島市防災課稲垣邦危機管理官「200人程度は入ります」

 ソーラーパネルによる発電設備も備えられていて、停電した際にも照明器具を使用できます。

 東松島市防災課稲垣邦危機管理官「避難場所に行くために車が必要だったりしますが、高齢者とか身体が不自由な人、車を持っていない人のために街の中間地点くらいに建てて、周りの人が安心して避難できる所を目指して整備しました。何かあったら迷わずこちらに避難していただければと思う」

 津波避難タワーは、民間の物を含めて宮城県に約30基あります。

 このほか、津波避難施設には津波避難ビルや土を盛って高台を築いた避難の丘、に高速道路にも津波避難階段が整備されています。

 津波避難タワーはあくまでも一時的な避難場所です。生理用品や介護用品などはありませんので、自分で準備する必要があります。

 スロープは、一般的なバリアフリーの物に比べて傾きが大きくなっているので、車いすの人が自力で登ることは人によっては難しいということです。

 東松島市の津波避難タワーでは、6月に地元住民らが参加して避難訓練を行う予定です。

 訓練を重ね、いざというときに施設がしっかり生かせるよう備えていくことが大切です。