認知症の一つ、アルツハイマー病の治療の新たな幕開けになるかもしれません。東北大学は、軽度のアルツハイマー病の患者に対する超音波を使った臨床試験で、認知機能の改善が見られたと発表しました。
東北大学の下川宏明客員教授は16日に東京都内で会見し、2018年から行ってきた臨床試験の結果を報告しました。
東北大学下川宏明客員教授「アルツハイマー病に関して全く違う発想で従来とは違う発想で、従来とは違う機序で新しい治療法が生まれようとしている」
アルツハイマー病とは認知症のうち6割から7割を占め、脳内に異常なたんぱく質アミロイドベータが蓄積され、脳の一部が委縮し認知機能が衰えると考えられています。
研究グループでは、マウスによる動物実験を経て2018年から軽度のアルツハイマー病の患者21人を対象に、脳全体に超音波をあてる臨床試験を実施しました。
週3回の治療を1年半行い、半分の患者には超音波をかけ、残りの患者には治療のふりはするものの実際には超音波をかけなかったところ、その後の認知機能のテストで差が現れたとしています。
東北大学下川宏明客員教授「改善に転じた患者さんも半分いらっしゃったんですね。それと一旦は悪化しかけた患者さんも戻ってこられるんですね。それがこの探索的治験で得られた重要な点」
アルツハイマー病の研究では、異常なたんぱく質によって脳内で信号を送る神経の働きが悪くなることに注目が集まってきましたが、下川客員教授のグループは大本になる血管に着目し臨床試験を進めてきました。
東北大学下川宏明客員教授「徹底的にアミロイドベータ悪人説で、それを下げるのではなくて、もっと上流を考えましょうと言っている」
これまでの新薬開発とは違い、脳出血やむくみといった副作用は現れず痛みや体調の変化などもなく、より多くの患者での効果を確かめるため、今後国内15の病院で200人規模の検証的な臨床試験を行うということです。