高騰している電気料金についてです。東北電力は、3割を超える値上げを4月から実施したいと国に申請しています。その行方は。値上げは避けられないのか。

 中小企業でつくる団体の運営を幅広く指導している中小企業組合士、地引和夫さんです。この日訪れたのは、宮城県石巻市のスナック。話題に挙がるのは電気料金です。
 中小企業組合士地引和夫さん「(自宅も)電気代、大変ですけど、実際、お店やってらっしゃる方は大変だ、大変だって。ママの所もお店が広いから結構大変でしょ」
 スナック経営岸淳子さん「そうなんです。お客さま帰ったら、すぐいろんな所(照明を)消せる部分は消すようにしています」

 東北電力は、自社で決められる自由料金について2022年の秋以降、順次値上げしました。更に、家庭や個人事業者向けの8割を占める規制料金についても、平均で32.94%の値上げを4月から実施したいと国に申請しました。

 国は、値上げの是非などを審査する手続きの一環として2月中旬、東北電力の主張や消費者の意見を聞く公聴会を開催。
 東北電力樋口康二郎社長「福島県沖を震源とする地震により、弊社の火力発電所などにおいて甚大な設備被害に見舞われるとともに、ロシアのウクライナ侵攻を受けた燃料価格や卸電力取引所の価格の高騰によりまして、弊社の収支財務状況は大きな打撃を受けております」

 東北電力は、このままでは安定供給に支障が出かねないと主張していて、規制料金に加え自由料金の一部について更なる値上げに踏み切る構えです。
 公聴会では、消費者団体の幹部ら11人が意見を述べました。中小企業組合士の地引さんも参加しました。
 中小企業組合士地引和夫さん「今回の値上げについては、私の周りの消費者から非常に厳しいと。少しでも値上げ幅を圧縮していただければ」

 電気料金の値上げの影響は地場産業にも及びます。石巻市の水産加工会社、ヤマナカです。本社工場の被災から立ち直ってきましたが、電気料金の値上げが復興の足かせになりかねません。
 加工や冷凍、製氷などに電気を使っていて、年間の電気料金は約750万円。これを3割以上引き上げたいと、東北電力から通知を受けたと言います。
 ヤマナカ高田慎司社長「震災から12年目を迎えて今までやってきた努力がようやく今、花を咲かせようとしている段階。(値上げ幅が)30%というのはちょっときついなと。せめて10%台に抑えていただけないかなというのは本音です」

 電気料金の値上げの影響は、製造コストを通じて商品を買う人にも及びます。ヤマナカでは、電気料金や輸送費などのコストが膨らむ分、人気商品のホタテグラタンをやや小ぶりにします。
 ヤマナカ山中慎司社長「現在200グラム入っているものです。これを160グラムまで減量しないといけない。商品代金をどうしても上げたくなかったんですよ」

 公聴会の前日、電気料金の値上げについて国が開いた審査会合ではこんなやりとりが。
 東京大学社会科学研究所松村敏弘教授「(東北電力が)顧客の負担を抑えるために最大限努力している、いうようなことが疑われちゃうんじゃないか」
 日本消費者協会河野康子理事「(東北電力の)普及開発費について疑念、疑問点がありまして」

 東北電力が、今回の値上げの周知や節電の呼び掛けに必要な広告費など普及開発関係費の分も電気代を値上げしたいとしていることに、委員から批判が相次ぎました。
 東北電力が見積もった普及開発関係費は25億円余り。会社の規模の違いはありますが、同じく4月の値上げを申請している中国電力の23倍です。
 これについて、東北電力の石山一弘副社長は。
 東北電力石山一弘副社長「値上げの実施以降もお客さまの負担の軽減の観点からも、周知促進活動は重要性を一層増すと考えてございますので、そういう趣旨で(費用の)織り込みをさせていただきました」

 この春からの値上げを申請しているのは、東北電力だけではありません。値上げ幅の圧縮を求める声は、全国各地に広がりました。そして、2月下旬。
 西村経済産業大臣「4月という日程あきりではなく、厳格かつ丁寧に審査は行うことと、という指示」
 電気料金の値上げは、家計や企業業績への影響が大きいことを踏まえ、国は4月の値上げ認可にこだわらず審査を慎重に進めることにしました。このため、値上げは5月以降になる見通しです。

 中小企業組合士の地引さんは一人暮らし。節電を意識していますが、それでも電気料金は月2万円に上ります。
 中小企業組合士地引和夫さん「ホットカーペットにしてエアコンを消す。毛布にくるまる。こういう感じで座っていると一番良い。値上げ幅、もう1回どこまで圧縮できるか。無駄なところは無いとは言いつつも、抑えられるところはないのか。知恵を出していただきたい」

 電気料金の値上げは、電気を使わずに生活や仕事ができる人はほとんどいないことを考えると、増税に近いインパクトがあります。
 値上げの時期は5月以降になる見通しということですが、値上げの幅は東北電力が申請した平均32.94%よりは縮まる可能性が高まっています。
 火力発電に使う液化天然ガスなどの燃料価格が下落傾向にあり、それを反映させるべきだという意見が広がっているためです。
 負担が増える自体は避けられそうにありませんが、納得感のある審査結果と説明を期待します。