女川原発2号機の再稼働をめぐり、重大事故が起きた際の避難計画に実効性が無いとして周辺住民が東北電力に運転の差し止めを求めた裁判についてです。

 仙台地裁は「避難計画に実効性を欠いていることをもって、直ちに運転の差し止めを求めることはできない」として住民の訴えを棄却しました。

高橋直希記者

 「裁判を傍聴席で聞いていましたが、3分ほどで判決の読み上げが終わると、傍聴席にいた支援者からは「ふざけるな」「どうやって避難するんだ」といった声が上がり、騒然としました。

 判決では、避難計画の中身については触れられず、原告側の主張を門前払いしたような形になりました。

 今回の裁判のポイントを振り返ります。

 1.避難計画の実効性が無いことが運転差し止めの理由になるか。

 2.差し止め理由になる場合、避難計画に実効性はあるのかということが争点になりました。

 福島第一原発事故の後、政府は全国の原発から30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務付けました。

 宮城県や自治体の避難計画では、原発から5キロ圏内の住民は事故が発生した場合、直ちに避難します。5キロから30キロ圏内の住民はまず屋内で退避します。放射性物質の飛散が過ぎてから車やバスで避難することになっています。

 争点1.について原告側は「重大事故が起きることを前提に考えると、避難計画に不備があるので人格権が侵害される」と主張。東北電力側は「事故が起こる具体的な危険性を立証していない」と反論していました。

 争点2.について原告側は「渋滞の発生が予想され、避難所の受付場所や放射線量を計る検査場所が開設できず不備ある」と主張しました。東北電力側は「国の了承が得られ、見直すほどの不備は無い」と主張していました。

 争点1.について判決では「重大事故が起こる危険性を原告は証明できていない。避難計画に実効性を欠いていることをもって直ちに運転の差し止めを求めることはできない」として、請求を棄却しました。この点について、原告側は「事故が起きる前提で避難計画が作成されているのに事故の危険性の立証を住民側に要求するのは過剰」と非難しています。

 争点2.については、裁判所は全く判断しませんでした。

 今回の判決を受けて、避難計画の在り方について原子力防災に詳しい専門家に聞きました。

 福井大学安田仲宏教授「そもそも避難計画が取りざたされ原子力発電所が動く動かないみたいな話になっている要因は、(避難計画の策定が義務付けられた)13道府県で議論がされて避難計画が策定されつつあるという中で、ちゃんとまだ整理されていない部分と、整理して市町村のレベルまで行き渡っている部分がある。

 避難計画自体が浸透していないということが背景にあって、今回の原告の方々のご指摘が色々あった訳ですけどもそういう不安があるという読み方をすると、それが地元で解消されていないということなんだと思うんですよね。

 そういう不安に対してはこういう手当てが考えられていると、ここはこういう風な方策をするんだけども個々の部分はまだ議論中であるとか、うまく地域地域で整理されて一歩一歩防災計画が積み上がっていって最終的に地域の方々が納得できるものになっていかないといけないんじゃないかなと」

 高橋直希記者「東北電力は、女川原発2号機を2024年2月に再稼働する方針で、再稼働に向け一歩前進する形になりました。

 避難計画を基に訓練を重ね、実効性を高めていく。そして、対話を重ね住民の不安を払しょくすることが、東北電力、県、地元自治体に求められていると思います」