新型コロナの影響で稼働がゼロになった、宮城県塩釜市の観光バス会社が再び動き出しています。インバウンドが徐々に回復し空白の3年間が埋まり始めましたが、新たな問題も出てきています。
19日、台湾からの観光客を迎える1台の観光バスが仙台空港に到着しました。台湾からの一行19人は、秋保温泉や青森県の奥入瀬渓流など東北各地を巡る4泊5日のバスツアーに参加しています。
観光客「食べ物、街はきれい。そして温泉が大好き。やっと来れるようになりました」「(来たかったのは)仙台、奥入瀬渓流」「アイライクジャパン」
添乗員「台湾の人は本当に日本大好きですから。1日も早く日本に来て温泉に入りたいと思っている」
台湾からの観光客を乗せた貸切バスを運行するのは、塩釜市の観光バス会社翔礼交通です。21年前に開業した社長の鈴木善雄さんは、戻って来た外国人観光客に笑顔を見せます。
翔礼交通鈴木善雄社長「台湾からコロナ後初のお客さんが来た時は、うれしかったですね。本当にうれしかったですよ」
インバウンド、外国人観光客を専門に貸し切りバス事業を展開してきた翔礼交通。2020年2月に国内で新型コロナの感染が拡大し始めると、バスの予約は全てキャンセルになりました。以来、バスの稼働はゼロ、収入もゼロとなり会社は休業を余儀なくされました。
翔礼交通鈴木善雄社長「いつになるか私自身はあと1年かかると思う。その日まで(会社が)持つか」
鈴木社長は当初、休業は東京オリンピックが始まる2021年夏までの1年間程で済むと見込んでいました。しかし、新型コロナの猛威は長引き休業期間は予想に反して約3年間にも及びました。
翔礼交通鈴木善雄社長「魔物ですね。魔物ですよ。もう見えるものであれば怖くはないんですね。見えないから怖いんですね。この先どうなるかっていうことの不安っていうのは、これはもう一概に一口では言い表せないぐらいつらい部分ってありましたね」
それでも、1月に新型コロナの影響で運休していた仙台空港の国際線定期便がようやく再開。再び、バス事業を展開できる状態にまでインバウンドの需要が回復しました。
しかし喜んでばかりはいられません。コロナによる休業期間中、会社の運転資金として日本政策金融公庫などから借り入れをせざるを得ず、その額は1億7000万円に上りました。2024年からは借金の返済が始まります。
更にバスのローンに加えて人件費や燃料費など、毎月の固定費は1200万円に上ります。
翔礼交通鈴木善雄社長「働いて返していけばいいわけですから、そんな借金は変わらない。ただ、怖いのはまたこういうような国が閉鎖したり、世界中がこういう風になったりっていうのはやっぱり大きな心配の一つです」
長引くコロナによる休業中、会社に残った運転手3人には雇用調整助成金を活用し雇用を何とか維持。この間、経営者と従業員の関係性は前にも増して深まったと言います。
翔礼交通鈴木善雄社長「その絆はね、より一層深くなりましたね。待っててくれたっていう私達にすれば、それは感謝の言葉ですよね待っててくれてありがとうですよ」
宮城県バス協会の調査によりますと、最も新型コロナの影響が大きかった2020年には、バス会社の売り上げは4月から6月の3カ月間でキャンセルなどにより67億円の損失を受けました。
2023年に入ってからは、国内外からの観光客によって業績は回復しコロナ前の9割程に戻ったということです。翔礼交通でもバスツアーの予約は紅葉シーズンの11月ごろまで順調に埋まっています。
しかし、ここにきて更なる問題も浮上しています。いわゆる2024年問題です。バスやトラックなど長距離輸送のドライバーの残業時間に上限が設けられ、業界全体で運転手不足が懸念されているのです。
翔礼交通鈴木善雄社長「雇用の問題がこう変わってくるわけですから。もう今まで1人でやったことが1人じゃできなくなる。もしくは2人でなかったら無理」
借金の返済、2024年問題による人材不足。コロナが落ち着いても課題は残されたままですが、鈴木さんはコロナによる空白の3年間で得たものは大きかったと振り返ります。
翔礼交通鈴木善雄社長「コロナの3年間を振り返れば、考える時間ってのはたくさんあったわけですから。だから私にすれば、あっという間の3年間でいろんな部分っていうのはやっぱり改革できたんじゃないかな。それが今につながってると思います。へこたれないで良かったなと思ってますよ」