幼くして老化が進む難病を抱える16歳の男の子です。我が子が2月に余命宣告を受けた両親です。
仙台市に住む高校1年生の須知誉(16)さん。2月に余命2カ月の宣告を受けましたが、今も懸命に命と向き合っています。
口から物が食べられなくなったため、胃に穴を開け栄養食や薬をチューブで流しています。
母親富美さん「腎臓病用の栄養補助食」「腎臓の機能的には4分の1くらい。そんなことになっているとは思わず」
誉さんは、生まれつき難病を抱えています。幼くして老化が進むコケイン症候群です。根本的な治療法は見つかっていません。
父親充さん「分からないねえ。分からないですね。何があるから危ないとかっていうのが分からないから難しいですね」「治ります、治ります以外(医師は)言わなかったよね。何かと大丈夫ですみたいな。もう少しですみたいな。あの時点で4歳だったからね」
1歳を過ぎたころ、つかまり立ちが出来ず、発達が遅いことを不安に思った誉さんの両親は、宮城県のあらゆる病院に行きました。しかし、原因は、分かりませんでした。
東京の病院でコケイン症候群と告げられたのは、誉さんが4歳の時。発症は50万人に1人。4倍から5倍の速さで老化が進むと言われていて、知的障害、歩行障害、視力障害、腎不全などの症状が現れます。
2017年。誉さん10歳。定期健診で東京にいる主治医、久保田医師を訪ねました。久保田医師は、コケイン症候群を研究している1人です。
久保田雅也医師「平均すると10歳くらいで腎機能のちょっとした低下が出ることもあるんですけど、コケイン症候群はみんな腎機能自体はいずれ悪くなることはあるんです」
腎臓の機能が低くなってくると命にかかわると言うコケイン症候群。その研究は、なかなか進んでいません。
久保田雅也医師「コケイン症候群の細胞からiPS細胞をつくって、それを腎臓にしてコケイン症候群の患者さんの腎臓が一体どうなっているんだということを見る計画はあるんですけど、人とお金がないと全然研究が進まないっていうのも確かにある。日本に100人ぐらいしかいない患者さんのために、大きな薬剤メーカーがなかなかやってくれないんですよ」
誉さんの父親充さんは、現実的に受け止めています。
父親充さん「治らないものに一生懸命治すために力を費やすより、もっと楽しむことに時間を費やしたい」
両親は、誉さんと2人の弟と家族みんなで楽しい時間を過ごそうと、さまざまな旅行の計画を立てました。
父親充さん「今までは、病院が優先になっちゃって楽しむことより病院行かなきゃ、病院行かなきゃみたいなことに時間をかけるウエイトを、バランスを変えられるようになったと思うし、誉がいてくれたおかげで、そういう環境だったおかげで、自分自身ももっと時間を大切にしようと思えるようになった」
母親富美さん「笑顔で送り出せるようにしていきたいと思います」
病を告知されてから12年。家族は、支え合って生活してきました。
「楽しい思い出をたくさん作ること」。
誉さん10歳の時、初めてのプールを経験しました。充さんと富美さんが結婚する前に遊びに来たという思い出の場所。
そして、地元のお祭りもみんなで。誉さんの体調をみながら、出来る範囲で出掛けました。
誉さんは、自力歩行が困難になり、視力もほぼ失いました。平均寿命は15歳から20歳と言われているコケイン症候群。
6月16歳になった誉さん、余命宣告を受け現在は予断を許さない状態が続いています。
父親充さん「自分が泣いて、死ぬほど泣いて誉の病気が治るなら泣きますけど、それで病気は治らないので泣きたくないっていう。泣く時って変なイメージをしている時だけなんです。亡くなっちゃうとか。それは終わってからでいいかなみたいな。全てがって決めていると言うか」
母親富美さん「第一章は診断を受けるまで。そこから第ニ章が始まって。ここから第三章かな。ずっと不安だ不安だは吹っ切れたかもしれないです」
余命を告げられてから始まった家族の第三章。
父親充さん「同じ(病の)子どもを持った人が(VTRを)初めて見た時に、あーやっぱりどんどんひどくなっていくんだ、やっぱり今後お先真っ暗だと言うのは嫌だけどね。どちらかと言ったら、楽しく生活は出来そうだなって思える方がいいな。こんなに可愛いよって」
須知さんご家族は、この病気を知ってもらい、研究に少しでも役立てればという思いで、取材を受けてくださっています。