日本初の月面着陸に挑戦した無人探査機SLIMについて、JAXAは誤差100メートル以内のピンポイント着陸に成功したと発表しました。日本の宇宙開発の大きな一歩に、宮城県多賀城市にある企業の3Dプリント技術が大きく貢献していました。
SLIM計画は、JAXA=宇宙航空研究開発機構が将来の月探査に必要な着陸技術と小型で軽量な探査機システムの実現を目指しています。
JAXAは25日、これまで得られたデータなどからSLIMは目標地点から約55メートル離れた位置に着陸し誤差100メートル以内のピンポイント着陸に成功したと発表しました。
月探査をめぐる国際競争が熾烈になるなか、日本初の月面着陸に大きく貢献した企業が多賀城市にあります。
日本積層造形製造部伊藤利久課長「地方の技術が月に行くという大きなプロジェクトに関わって、しっかり成果を出せたということは大変誇りに思っています。(先方から)こういうのでやってほしいというのを納めて試験して、また変えてということを愚直に進めた結果だと思っています」
こちらの会社が開発したのは、探査機の5本の脚に装備された衝撃吸収材です。直径は約18センチで、重さは400グラムほどです。
アルミニウムを3Dプリンターで網目状のドーム形にすることで、着陸時に潰れて衝撃を吸収し探査機を守ります。
JAXAとの共同研究では、15種類近い試作品を作っては潰す実験を繰り返し3年をかけて完成させました。
日本積層造形佐藤正一工場長「これはJAXAに納めたSLIMの衝撃吸収材の(製造)途中経過です。このベースプレートに粉をひきまして、レーザーを当てて溶融凝固をさせると、それを30ミクロンの厚みでどんどん積層していくというのが3D造形の作り方になります。この上に全体的にドーム型にこういうふうなラティス(格子状)が構成されて実際にSLIMの中で使われたと」
従来の代表的な金属加工方法では、型から取り出せない形状や刃物が入らない形状の場合は対応ができません。
しかし3Dプリンターを使うことで複雑な形状でも対応でき製造の幅が広がり、強度も厳しい宇宙環境で対応可能なレベルまで高めることができました。
日本積層造形製造部伊藤利久課長「まだまだ欧米に比べると、日本で金属積層造形(3Dプリント技術)というのはメジャーな工法ではないというのもありますので、今回のことを糧に航空宇宙関係をはじめ積層造形ならではの形状を取り込んだ製品というのをしっかり作っていきたいと考えています」
3Dプリンターでの造形に欠かせない設計図もこちらの企業が作成していて、今後も高い品質が求められる航空宇宙分野を中心に製品をつくっていきたいといきたいとしてます。