アメリカのトランプ大統領が打ち出した相互関税が、世界を揺るがしています。アメリカへの輸出を手掛ける宮城県の企業からも不安の声が上がっています。

 トランプ大統領「日本はタフな国だ。日本はアメリカに46%の関税を課していて、車など特定の品目ではより高い関税を課している」
 アメリカのトランプ大統領が日本に課そうとする相互関税は、24%です。現在は90日間の猶予期間中で日本政府が見直しを申し入れていますが、事態打開のめどは立っていません。
 自動車部品製造業担当者「今のところ不安しかないですよね」

 ジェトロ調査部磯部課長代理「おそらくトランプ政権としては、関税政策のアクセルをとりあえず踏めるだけ踏むような状況になっていくのかなというところであります」
 18日、ジェトロ仙台が開催したセミナーでは第2次トランプ政権が発足したことによる世界経済への影響を講師が解説しました。参加者の半数は、宮城県の中小メーカーや卸売業の担当者たちです。最大の興味は、もちろんトランプ大統領が日本を含む貿易国に課すと発表している相互関税です。

仙台市でセミナー

 相互関税とは、アメリカからの輸入品に高い関税を課している国に対して、その国からアメリカへの輸出品に課す関税を同じ水準に引き上げる措置です。
 アメリカの貿易赤字を解消するためとトランプ大統領は主張していますが、この措置が貿易に与える影響は複雑でどのようなことが起きるのか予測が難しいと言われています。

 セキュリティーソフトウェア製造業「製品を輸出した時に、やはり色々とアメリカも含めてですね、色々な影響があるだろうということで、考えてございます。現時点でアメリカ市場への輸出品目は、まだ無いです。ただ今後考えていた矢先でしたので、あぜんとしているというところです」
 自動車部品製造業担当者「弊社の製品ですね、アメリカ向けに大量に輸出やらせていただいているものですから、今までゼロから数%だった関税が最大で25%になるということで、売価であるとか製品単価にも直接影響してきますので、今のところ不安しかないですよね」

 参加者から聞かれたのは不安の声でした。切実な声は老舗酒蔵からも上がりました。創業360年を超え、現存する酒蔵のなかでは宮城県最古という富谷市の内ヶ崎酒造店です。
 工場では主要銘柄、鳳陽の瓶詰め作業が行われていました。
 内ヶ崎酒造店内ヶ崎啓社長「これが今回アメリカに輸出するお酒になります。ちょうどホノルルに行く商品になります」

老舗酒蔵も切実な声

 アメリカに輸出している鳳陽です。早くから輸出に力を入れている内ケ崎酒造店では、売り上げの3分の1を輸出が占めていてそのうちの8割から9割がアメリカ向けといいます。
 それだけに、内ケ﨑さんはトランプ関税に衝撃を受けています。
 内ヶ崎酒造店内ヶ崎啓社長「お酒飲まなくなるんじゃないかという量的な意味で、飲めなくなるんじゃないかということに対して非常に心配しました。まず間違いなく、値段が24%上がったら個人の財布事情が完全に影響してくるなと思って、飲む量が減るなと思いました」

 「相互関税によってアメリカ国内で物価が上がると、嗜好品である日本酒は真っ先に買われなくなるのでは」。内ケ崎さんが抱える不安です。昨今の米価格の上昇も悩みの種です。
 内ヶ崎酒造店内ヶ崎啓社長「米の購入が全部終わったので計算しますと、1.6倍ぐらいですね。全部をお客様の方というか商品価格に転嫁はできないんで、そしたらお酒の値段1.6倍になっちゃうので、それで急にはなかなか受け入れてくれないのでなかなか難しい」

 米に加えて瓶やラベル、キャップに至るまで円安の影響で値上がりしていると話します。内ケ﨑さんは、日本国内やアメリカ以外の国での販売量を増やすことでトランプ関税に対応しようと考えています。
 内ケ崎酒造店内ケ﨑啓社長「正直なところ言いますと、やっぱり分からないっていうのが正しいですね。ここからどのようにアメリカ政府がしていくのかによって変わるので、どこで正常化するのかが読めないところが一番の心配っていうところです」

 影響は中国にも及んでいます。アメリカと中国の間では報復関税の応酬がエスカレートしていて、アメリカは中国に対して145%の関税を掛ける事態になっています。
 仙台市に本社があるアイリスオーヤマは、中国10カ所の工場で家電製品やLED照明、木製品など様々な製品を生産し日本やアメリカなどに輸出しています。
 アメリカへの輸出は、トランプ関税の影響を大きく受けることになります。
 アイリスオーヤマ広報室今泉真紀サブリーダー「たとえば中国で作っている物を、じゃあ次どうしたらお客様にとって一番影響が最小限に抑えられるかというところを一番考えておりますので、生産するには色々コストが掛かりますので、そこの部分はトータルで見た時に何がお客様にとって最善なのかということを検討していきたいと思います」

アメリカでの生産体制強化へ

 こうした中、アイリスオーヤマが21日に早くも打ち出した対策が、アメリカ国内の生産体制の強化です。これまで中国で製造していたペットシーツと医療用マスクの生産をアメリカでも開始し、プラスチック製品の成型事業も拡大し関税の影響を受けない供給体制をつくるとしています。中国工場でも供給体制の見直しを検討する可能性があるということです。

 一方、日本政府は赤沢経済再生担当大臣が渡米しトランプ大統領と初交渉を行いましたが、事態打開のめどは立っていません。国際秩序の変動をももたらしかねない「トランプ2.0」の世界。ただ、企業はその変化に対応していかなければならないと、アイリスオーヤマ広報室の今泉さんは話します。
 アイリスオーヤマ広報室今泉真紀サブリーダー「今回の相互関税措置というところで当社の輸出事業は、少なからず影響が出てくると考えております。特に食品事業におきましては、弊社の中でもアメリカ輸出は大きな輸出先の1つになっている実情ございますので、今後の動向を注視しつつお客様の影響を最小限に抑えるような対応策を検討してまいりたいと考えております」」