東日本大震災の経験から、ドローンを使って自分たちの街を守ろうと動き出した男性、そして、AIの技術を取り入れた新たな捜索システムの研究です。
宮城県南三陸町では、2年前から被害状況の把握や不明者の捜索などにドローンを取り入れた防災訓練を行っています。ドローンに搭載された赤外線カメラが人の体温などを検知するため、夜間など明かりの少ない状況でも、捜索が可能になります。
担い手は街の電器店を営む菅原優さん(67)です。街を守る一助になればと、震災後に動き出しました。
遊電館志津川店菅原優さん「1人でも命助けてあげたいなっていう思いはあります。ドローンで少しでも命救えれば良いかなっていう感じはしてます」
13年前、震災を経験した菅原さんは、街が津波に飲み込まれ建物が倒壊し、思うように捜索が進まない現状を目の当たりにしました。
遊電館志津川店菅原優さん「お店も骨の状態ですよね。外壁も無くなって。津波の威力はすごいなっていう感じはしました。その時にドローンがあったら、津波が来てるよとか、逆に逃げられたかもしれないですよね」
災害時、ドローンにはいくつかの機能が期待されています。被害状況の把握や記録、情報伝達や避難の呼び掛け、救援物資の運搬などです。
仙台市は、沿岸部に津波警報などが出された際、上空から避難の呼び掛けを自動で行うドローンの本格運用を2022年から開始しています。
菅原さんは、2023年に地域の消防本部と覚書を結び、要請に応じてドローンを操縦し情報収集などを行います。
気仙沼・本吉地域消防本部佐藤宗一警防課長「財政的な面であったりだとか、あるいは安定的な操縦士の育成の問題等により導入できていなかったのですけれども、要救助者の観察、あるいは消防隊がその位置まで侵入するルートの確認であったりとかにも非常に有効なものと考えております」
ドローンを使った新たな捜索システムの研究が進んでいます。仙台市に拠点を置く東北ドローンと東北大学は2022年から共同研究を繰り返し、2023年にドローンとAIを活用し山岳遭難者を探す革新的なシステムを開発しました。
東北ドローン桐生俊輔社長「飛ばすだけではなくてAIを使って人を見つける。更に場所を推定する」
被害が広範囲に及ぶ大規模な災害の場合、限られた捜索隊を効率的に救助へ向かわせる必要があります。
東北ドローン桐生俊輔社長「現場で作業をされる方々の負担を少しでも減らすことが、ドローンを使ってできないかなという考え方がメインになっているので」
課題解決に向けて現在進んでいるのが、AI技術や位置情報システムを取り入れた捜索システムの構築です。東北大学で災害対応ロボットを研究する岡田佳都特任准教授のグループが進めています。
東北大学岡田佳都特任准教授「四角で囲われてパーソンと書いてあるのが、AIが要救助者の方であると特定したものになります。なので、白く映って温度が高いというだけではなくて、例えば車とか立っている方っていうのは形が違いますので、そういうのも選り分けて倒れている要救助者の方だけを検出していると」
この検索システムでは、救助が必要な人だけをピンポイントで表示させることを目指しています。課題となるのが精度の向上です。
精度の向上には、救助が必要な人を取りこぼさずにAIが把握することと、2救助が必要ない人を間違って認識しないことが重要です。
倒れている人を救助が必要な人と認識するように実験したデータを割合で見てみると、AIが救助が必要と判断できた割合は50.9%と半分強にとどまりました。AIが救助が必要だと判断したうち、90.5%が正しく検出されていて間違いの割合は1割以下にとどまりました。
今後は、救助すべき人を見逃さないために大きさと位置のデータをより多くAIに学習させることで精度を高めます。
東北大学岡田佳都特任准教授「もっともっと要救助者の方を見つける確実さや見逃しの少なさを上げていくと、より実用に近づくのかなというふうに思います」
災害時の活躍が期待されるドローンについて、災害対応に詳しい専門家は実際に運用するには乗り越え無ければならない課題があるといます。
防災科学技術研究所内山庄一郎主任専門研究員「ドローンに期待される様々な可能性は大きく制限されてしまうという状況はあります。大規模災害の時は、緊急用務空域という緊急の空域が一時的に設定されることがあります」
能登半島地震では、捜索や人や物資の輸送が必要になりヘリコプターなどの有人機の妨げにならないよう国土交通省が約1カ月間、ドローンなどの無人航空機の飛行を原則禁止にしました。
防災科学技術研究所内山庄一郎主任専門研究員「有人機と無人機を災害の直後にどのように共存させるのか、有人機にはどういうミッションをどういう任務を与えるべきでドローンにはどういうようなことをやってもらうべきなのか、役割を含めて今後考えていかねばならないと思っております」