弁当店に並んでいた90歳の男性が車にはねられ、死亡した事故。裁判にかけられた被告は亡くなった男性の友人でした。

■被告の86歳「死亡した男性は友人」

 法廷で浮かび上がったのは被害者と被告人を取り巻く人間関係でした。

 弁当店に突っ込んだ車と弁当店の壁の間に挟まれて亡くなった90歳の男性と事故のきっかけを作ったとして起訴された86歳の男。2人が30年来の友人関係だったことが9日の初公判で明らかになりました。

目撃者 「(被害者は)腰から下を車で挟まれていた。出血はなかった。ただ呼吸も浅く、心臓(の鼓動)もゆっくり遅かった」

 亡くなった90歳の男性は事故の1週間ほど前に妻を亡くしたばかり。1人で弁当を買いに来ているところでした。その弁当店の目の前の交差点で起きた事故です。

 藤木被告は妻を亡くした友人を見舞おうと車を走らせ、交差点に差し掛かりました。そして右折しようとしたところ、右から来た車と衝突。そのはずみで相手の車が弁当店に突っ込んだということです。

 検察側は藤木被告が「注意義務を怠った」と主張しています。

 被告人質問で、藤木被告は亡くなった男性について…。

藤木被告 「30年来の付き合いで、ずっと、ほんと仲の良いお友達でした。お見舞いに行く途中で事故を…。私もすぐ降りていって、名前を呼んでいたら、すぐ冷たくなりました」

 藤木被告は定年まで約30年間、タクシーの運転手として働いていました。いわば、運転のプロです。

 検察側は「過失の程度は大きい」などとして禁錮1年6カ月を求刑。

 藤木被告は最後にこう語りました。

藤木被告 「免許も更新せずに失効しました。絶対に車は運転致しません」