第2次トランプ政権が始動するも外交交渉、関税政策などで多くの誤算も生じ、国際情勢と世界経済は混乱を極めている。トランプ米大統領は3月21日、米空軍の次世代戦闘機「F47」の開発契約を、米航空機製造大手「ボーイング社」と締結することを発表した。トランプ氏が第47代大統領であることを踏まえ、「F47」と命名されたとみられる。トランプ氏は「軍高官がF47という美しい数字を選んでくれた」と感想を語り、「私の指示で米空軍は世界初の第6世代戦闘機を開発している。世界に匹敵するものはない。それは『F47』という美しい数字で知られるようになる」と述べた。

トランプ大統領とロシアのプーチン大統領は3月18日、ロシアが侵攻を続けるウクライナでの停戦に向け、電話会談を行った。米政府によると、プーチン氏は、エネルギー施設とインフラへの攻撃停止については合意したが、30日間の全面的な停戦には拒否するなど誤算が生じたとみられる。プーチン氏は、諸外国がウクライナに提供している軍事援助と情報提供が終了しない限り、包括的な停戦には応じられないとの見解を示した。ウクライナに関する次回の米ロ間交渉は、同月24日にサウジアラビアで開催されることで合意した。トランプ氏は19日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行った。トランプ氏は自身のSNSで、極めて良好な会談だったと明らかにし、「我々は順調に進んでいる」と投稿した。トランプ氏は21日、ロシアとウクライナの戦争終結に向けた和平交渉に関して、「近く完全に停戦し、領土分割に関する協定も協議される」と述べた。詳細は明らかにしなかったが、ロシアが一方的に併合したウクライナ東部・南部4州やクリミア半島の帰属を指すとみられる。

鳥インフルエンザの感染とインフレ進行の影響を受けて、米国では現在、卵価格が供給不足から高騰している。米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、米国では今年2月、大型の卵12個で5.9ドル(約880円)、一部の市場では10ドル(約1500円)。卵価格の高騰が続く中、ニューヨークで無料で卵を配布するイベントが開かれ、大勢の市民が訪れた。卵の無料配布には、1人に12個入りパック1つ、100人分が用意されたが、5分で終了した。配布に漏れた市民は、「トランプ氏は国民や経済のために、何もしてくれない。人に対する復讐ばかり」と語り、不満をあらわにした。

米国とEU(欧州連合)間における貿易戦争がさらに激化の様相を呈している。トランプ氏は3月13日、欧州産のワインをはじめ、その他のアルコール飲料に200%の関税を課す方針を明らかにした。トランプ氏はEUに対し、厄介な関税の即時撤廃を要求したうえで、「EUは敵対的で乱暴だ、米国を利用することだけを目的に形成された」と非難した。米国が同月12日に、鉄鋼とアルミニウムに対する25%の関税措置を発動したことが契機となり、EUは12日、4月1日から第1弾の報復措置として、米国産ウイスキーなどに50%の関税を課す方針を発表していた。(後に4月中旬からに変更)

トランプ政権による高関税乱発は、米国をはじめ世界経済の不確実性を急速に拡大させた。それは、株価低迷やインフレ懸念という誤算から生じているかもしれない。米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)は3月18、19両日に開催した会合で、政策金利を4.25―4.5%に据え置くことを決めた。パウエルFRB議長は、利下げに踏み切る政策変更については、「急いでいない」とし、トランプ政権が打ち出す一連の政策がさらに明確となるまで待つ姿勢を鮮明にした。パウエル氏は、「米国経済の不確実性が異常なほど高まっている」と指摘した上で、「われわれは行動を急ぐつもりはない」と見解を示した。FRBの利下げ見送りについて、トランプ氏はSNSに、「米国の関税が経済に反映し始めたら、連邦準備制度は金利を引き下げた方がずっといい」と投稿し、政策金利の引き下げをするべきとの認識を示した。

★ゲスト:鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)、峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員) ★アンカー:木内登英(野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)