震災後、がれき撤去や道路復旧などの応急復旧作業に当たった仙台建設業協会。次の災害に備え、震災の経験を生かそうと取り組みを進めています。
仙台建設業協会深松努会長「(震災前は)ここに家が建っていたのに、まったく流されて何も無くて。交差点の所にガソリンスタンドがあったが、がれきのモンスターみたいになっていて、最初はガソリンスタンドかどうか分からなかった」
仙台市の建設会社80社が加盟する仙台建設業協会の深松努会長です。この日訪れたのは、復興が進んだ仙台市若林区の荒浜地区。震災の津波で、当時、この辺り一帯は浸水し、がれきが散乱していて、行方不明者の捜索や復旧作業の妨げになっていました。
仙台建設業協会は震災当日、仙台市からの要請を受け、市内の沿岸部で救助活動を円滑に進めるために、がれきの撤去や道路を切り開く作業などに当たりました。
仙台建設業協会深松努会長「重機で道路の脇に田んぼの方に(がれきを)よけながら道を造って、前へ前へ海の方へ向かっていった。後ろから警察、消防、自衛隊が来て作業した」
がれきの撤去は東部沿岸部を4つのエリアに分け、協会に加盟する80社のうち51社を割り当て行われました。
市内のがれきの総量は一般ごみの4年分に当たる137万トン。がれきの撤去には延べ43万7859人を投入、重機は延べ34万4329台に上りました。撤去作業が終わったのは震災から約1年後。東部沿岸部の復興に道筋をつけました。
仙台建設業協会深松努会長「あれだけの被害を受けても必ず復興できるんだっていう、できたんだというのを見てもらって、諦めなければ必ず成し遂げられるというのを知ってもらいたい」
東日本大震災の経験は、南海トラフ地震が想定される地域で生かされています。今後40年以内にマグニチュード8から9クラスの地震が発生する確率が「90%程度」に引き上げられた南海トラフ地震。仙台建設業協会は、2018年に静岡・浜松市の建設業協会と災害時の相互援助に関する協定を結びました。協定は、通常、行政と民間が結ぶことが多く、民間と民間、それも地域を越えて締結するのは異例です。離れた地域同士で協定を結ぶことが、災害時の迅速な復旧につながります。
仙台建設業協会深松努会長「同じ地震でやられない地区、同規模程度の都市と組むのが非常に重要。南海トラフ(地震が)来ても仙台は平気です。我々は燃料、食料、物資を調達できます。すぐ助けに行きます」
協定では、仙台と浜松のどちらかで災害が発生した場合、要請がなくても24時間以内に駆け付けることになっていて、あらかじめ人員や機材、宿泊先などを決めておきます。仙台からは初動は10人程度を派遣。タンクローリーに満載した軽油と約1週間分の食料などを持ち込みます。壊滅的な被害を受けた東日本大震災で直面した人材・燃料・食料不足の教訓が生かされています。
仙台建設業協会深松努会長「食料が無いとどんな人間も腹減ったら『戦』ができない。うちの会社も3日で食料が切れちゃった。4日目に仲間から食料届き始めて、そこから全国の仲間がみんな来てくれた」
浜松市は2005年に近隣の11の自治体と合併し、面積は全国の市町村の中で2番目に広くなりました。災害時、地元業者だけで対応するのは困難です。
浜松建設業協会中村嘉宏会長「地震・災害が起きた時に経験をしたことがある人間が助けに来てくれる。手伝いに来てくれるのは本当に心強い。一緒になって同じ目的である人命救助・災害対応をするのは我々の誇りの部分でもある」
災害からの早い復旧。そして、その後の復興に大きな役割を果たす建設業界。しかし今、人口減少による担い手不足や高齢化という課題に直面していて、次の災害が起きた際、復旧や復興への影響が懸念されています。
深松会長は、大規模災害に備え、全国で連携強化が必要と話します。
仙台建設業協会深松努会長「高齢化、後継者がいない、担い手がいない、全産業が人の奪い合い。建設業産業は昔は685万人いた。今は507万人に減っている。災害の対応力がどんどん落ちていく。とにかく災害だけは関係なく来るので、いつ来ても良いようにしておかなければいけない」