「平和の使者」を自称し、ロシアやウクライナなどを歴訪したハンガリーのオルバン首相の言動がヨーロッパで物議を醸しています。

 オルバン首相はEU(ヨーロッパ連合)の議長国となった今月初めからウクライナ、ロシア、中国を歴訪し、各国で首脳会談を行いました。

 アメリカではトランプ前大統領と会談しました。

 外遊についてEU各国に事前に知らせず、合意を得ていませんでした。

 ドイツのビルト紙などによりますと、オルバン首相は歴訪後、EUのミシェル大統領宛てに書簡を送り、EU諸国に対してロシアとの対話を開始するよう求めました。

 また、トランプ前大統領について「大統領選で勝利すれば就任式を待たず直ちに和平のために行動する準備ができている」「トランプ氏には詳細かつ根拠ある計画がある」などと記したということです。

 オルバン首相の言動に対してEU諸国は反発していて、アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」は8月に予定されているハンガリーでのEU外相会合をボイコットする予定だと報じています。

 オルバン首相は自身を「平和の使者」だと自称し、EUにロシアとの対話を呼び掛けています。

 一方、欧州委員会は「宥和(ゆうわ)政策」だと批判しています。

 1938年、イギリスはナチス・ドイツに対して「宥和政策」を選択し、チェコスロバキアのズデーテン地方の割譲を認めました。

 しかし、ナチス・ドイツの拡張主義に歯止めは掛からず、ドイツ軍がポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が始まりました。