この夏、懸念されるのは深刻さを増すオーバーツーリズムです。外国人に特に人気の富士山と北海道では、さまざまな問題が起きています。現状を取材しました。(7月20日OA「サタデーステーション」)

■訪問外国人は過去最多に

訪日外国人の数は、今年3月から4カ月連続で300万人を超え、上半期の合計はおよそ1778万人と過去最多となっています。夏休みシーズンに入り、さらに増えることが予測されます。

外国人観光客から特に人気を集めている富士山。20日朝、山頂付近は視界も悪く、前に進もうとしても進めず、多くの登山客は、足を止めていました。山頂の神社で、住みこみで働く植田さんは…

山頂の神社で働く植田めぐみさん 「(20日朝は)あまりにも寒かったので、薄着の人はあまりいなかったんですけれど、100%安全な場所というのはないので、細心の注意を払い、気を張った状態でご来光を見ていただきたい」

今年は、開山してから遭難事故が相次ぎ、すでに5人が亡くなっています。一体、何が起きているのでしょうか?

■山小屋近くで野宿する登山者も

サタデーステーションは山梨側にある富士山の吉田ルート8合目に向かいました。

富士山吉田口旅館組合 井上義景事務局長 「全部で40~50人はいたと思いますこの辺りのベンチとかでも、シートを被って寝ているような人もいましたね」

8合目で山小屋を営む井上さんは、宿を取らず、山小屋周辺で野宿する登山客がいるといいます。昼間との寒暖差が激しく夜になると、かなり冷え込む8合目。

報告・山田直喜ディレクター(富士山「吉田ルート」8合目 19日午後11時ごろ) 「現在の気温11℃です。風も強くて非常に寒いです」

19日夜、山小屋周辺を取材していると…

山田直喜ディレクター 「宿泊施設の外なんですけれども、このように登山道の脇にですね、リュックが置いてあります。人もいますね」

暗闇の中、フードをかぶり座っていたのは中国から来た留学生です。留学生仲間10人と一緒に来ていました。

山田D「このまま寝ずに(山頂まで)あがるんですか?」 中国人留学生「そう、あがります」 山田D「ここで寝ていたんですか?」 中国人留学生「まあ…寝ていないです」

この男性のグループは山小屋を予約せず、徹夜で山頂を目指すといいます。番組スタッフは、徹夜での登山は危険だと注意をしましたが…

中国人留学生 「自分は1年くらい前に富士山を登山する際には山小屋を予約したんですけど、今年は弾丸体験したいと」

すると、その直後…

山田直喜ディレクター 「何人か救護所に入っていきました。先ほど弾丸で行くといっていた中国からの留学生の1人ですね」

先ほど取材した中国人留学生のグループの1人が体調不良を訴え、8合目にある救護所に入っていきました。

山田D「大丈夫ですか?」 留学生「大丈夫ですよ」 山田D「何があったんですか?」 留学生「高山病と食べ過ぎ」

■入山規制開始も…続く弾丸登山の問題

弾丸登山は、なぜなくならないのでしょうか?吉田ルート5合目のゲートで取材を続けていると、山小屋を予約せず、軽装で通過しようとする外国人と遭遇。

職員「山小屋泊まるんですか?予約はしていないんですか?」 ベトナムから来た登山客「予約はしていない。カッパ(雨具)は持っている、いっぱい持っている」 職員「ジーンズが一番、体が寒くなってすごく冷えるんです」

3人は、その場で7合目の山小屋を予約し、着替えて山頂まで向かいました。

山梨側では、今年から通行できる時間を午前3時から午後4時までと制限しています。その結果、今月1日から18日までの18日間で、午後5時から午前3時までに6合目を通過した登山客は、去年の4分の1程度に留まっていますが、宿を取らず、徹夜で山頂を目指す弾丸登山客の問題は、今も続いています。

山梨県 長崎幸太郎知事 「準備不足の通行をお断りするような条例が必要かもしれません。対策として考える必要があるのではないか」

■人気の「青い池」でもマナー違反相次ぐ

オーバーツーリズムによる問題は北海道の人気観光地でも。

今週、美瑛町の「青い池」で撮影された映像には、遊泳禁止の池で泳ぐ外国人男性の姿が。20日、その「青い池」に向ってみると…

報告・若林奈織ディレクター(北海道・美瑛町20日午後1時ごろ) 「全然動かない。うわ…凄い渋滞。何台止まっているんですかね。先が見えない」

反対車線は、スムーズです。

報告・若林奈織ディレクター 「歩いて青い池に向かう人もいますね」

道路脇には、放置された車も…。人口9000人程の美瑛町を訪れる観光客は年間238万人。「青い池」は、季節を問わず水面が美しいブルーに染まる神秘的な池。海外の人にも大人気の撮影スポットです。それゆえに…

報告・若林奈織ディレクター 「あちらのお子さん、柵の上に乗ってますね。ちょっと危ないですね」

旅行者による危険行為は後を絶ちません。19日、この場所では…

報告・若林奈織ディレクター(北海道・美瑛町19日) 「どこから飛んできたのか、ドローンが飛んでいます。女性がドローンに向けてポーズを決めていました」

飛ばすのには、町の許可が必要ですが…

ドローンを飛ばしていた中国人男性「(許可は)どこでも必要?この場所が必要?」 若林D「(許可が)必要なので、気をつけてください」 中国人男性「すみません、本当に分かりません」

ルール違反は周辺の農地でも…

報告・若林奈織ディレクター 「道路に座り混んで写真撮影している人もいますね。あっ、後ろから車来てます」

背景にしているのは「セブンスター」の木。道路での写真撮影はおさまりません。その一方で…

報告・若林奈織ディレクター 「こちらは、かつて人気の撮影スポットだった『哲学の木』があった場所ですが、今は木はありません」

所有者は、農地を踏み荒らされるなど迷惑行為に悩まされた末、苦渋の決断をしました。

哲学の木を伐採した佐藤仁昭さん 「最終解決策は、もう倒すしかないよね」

町では、対策を進める方針ですが、佐藤さんは、観光客との共存も大事だと訴えます。

佐藤仁昭さん 「物理的に、看板だロープだとか、できればしたくないんですよね。『綺麗だよね』『また美瑛来たいよね』っていうリピートをやっぱつけていくのが理想なんで。最低限のルール、マナーはやはり守ってほしいですよね」