「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の男性を殺害したとして起訴された元妻が、初公判で無罪を主張しました。目撃者がいないなか、検察側が着目したのは、元妻のインターネットでの検索履歴でした。

■28歳元妻「私は殺していません」

 事件から半月後に撮影された映像です。黒い髪をなびかせ、サングラスを掛け、さっそうと立ち去る須藤早貴被告(当時22)は無言を貫きました。

 6年前、資産家「紀州のドンファン」こと野崎幸助さん(当時77)に致死量の覚醒剤を摂取させて殺害したとして、殺人などの罪に問われています。

 12日、初公判に出廷した須藤被告は黒のワンピース姿で入廷。須藤被告は「私は殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません。私は無罪です」と、小さく淡々とした口調で無罪を訴えました。

 検察側は「資産家である野崎さんと財産目当てで被告は結婚し、完全犯罪により莫大(莫大)な資産を得るため、致死量の覚醒剤を摂取させて殺害した」と主張しました。

 検察は目撃者などの直接証拠が乏しいなか、状況証拠の積み重ねで消去法的に犯行を立証する方針です。

 弁護側によると、2人の出会いは2017年12月、野崎さんは須藤被告に会うなり、帯付きの100万円の束を差し出し、「結婚してください」とプロポーズしたといいます。

 須藤被告は冗談だと思い、「毎月くれるならいいですよ」と応じました。その後に振り込みもあり、「本当にもらえるならいいかな」と2018年2月に結婚したといいます。

 しかし、1カ月後、須藤被告との結婚生活に不満を抱いた野崎さんは離婚届を作成します。

■「老人 完全犯罪」元妻が検索

 検察側が着目したのは、須藤被告のインターネットの検索履歴です。離婚届が作られてほどなくして検索していたのは…。

検察側冒頭陳述によると 3月31日「老人 完全犯罪」 4月7日「覚醒剤 過剰摂取」 4月22日「妻に全財産を残したい場合の遺言書の文例」

 須藤被告は同じ時期、十数万円を支払って、覚醒剤と思われるものを入手。そして、結婚からおよそ3カ月後の5月24日、事件が起きます。

 午後3時すぎ、家政婦が外出し、帰宅する午後8時ごろまで自宅には夫婦2人きりでした。

 この間に野崎さんは何らかの形で致死量の覚醒剤を摂取し、死亡します。死因は急性覚醒剤中毒。それまで野崎さんに覚醒剤の使用歴はありませんでした。

 野崎さんの死後にも、須藤被告の検索履歴にはこんなワードが並んでいたといいます。

検察側冒頭陳述によると 6月3日「覚醒剤 検挙率」 翌年4月27日「殺人罪 時効」 4月28日「殺人 自白なし」

 事件から3年後、須藤被告は逮捕・起訴されます。

 弁護側は「本当にこれは殺人事件で、最も疑われることが明らかな被告が犯人なのか。怪しいという理由だけで処罰してはならない」と、無罪を主張しています。

(「グッド!モーニング」2024年9月13日放送分より)