東京・日野市で12日、イチョウの木が折れ下敷きになった男性が亡くなりました。報道ステーションでは、第一発見者に当時の様子を聞くことができました。

■第一発見者「木が何重にも」

東京のベッドタウン、日野市にある団地近くの遊歩道。住民生活になくてはならない道でした。

近隣住民 「(Q.よく通る)通る。買い物行く時でも医者に行く時も」 「昔からよく通って遊んでたから。この道、夏は涼しくていい」

12日午後6時半過ぎ、日が落ちて辺りが薄暗くなるなか事故は起きました。

第一発見者 「バリバリバリと爆竹みたいな音がした。最初は花火かなと思って。現場が見えるところで前の道がふさがっていたので『何だこれは?』と思って。木が何重にも重なっていたのと、夕方で暗かったというのもあって、なかなか分からなかった。人っぽいところが見えたので警察に電話して」

落下したイチョウの枝の下敷きになったのは36歳の男性でした。

第一発見者 「(Q.救出される時は)遠目で見ていた。ずっと消防がチェーンソーで(枝を)切断していて。1時間くらい切断作業して救出された」

しかし、男性は死亡が確認されました。

第一発見者 「(Q.あんなに太い枝が折れるのは)あそこまでのは初めて。(Q.風は)全くない」

■直近の点検では「健康」なぜ?

遊歩道を管理する日野市は7月末の現地調査で、この木を「健康」と判断していました。折れた断面を見ても腐食したような様子はありません。では、なぜ事故は起きたのでしょうか。

現地調査を行った樹木医の見立てです。イチョウの木にはオスとメスがあり、事故が起きた木はメスだったといいます。

日本樹木医会 小林明理事 「高さが30メートル近い。上の方にたくさんギンナンになる実がなっている。イチョウの実が成熟して1個あたり10グラムあるかないか。それが細い枝にたくさんついて、1つの枝あたり数十~~100キロ単位で重くなっていたと思われる」

この夏の異常気象の影響もありました。

日本樹木医会 小林明理事 「風や雨に打たれました。8月以降、繰り返されて少しずつ枝を支える部分に微細なヒビが入ったと。それが積み重なって金属疲労的に限界を迎えた」

警視庁によると、少なくとも6本の枝が折れていました。上の枝が下の枝を巻き込みながら落下し、次々に折れたとみられます。

斉藤鉄夫国交大臣 「今回、死亡事故という大変重たい事態になりました。どのような形で樹木管理を行っていけばいいか。ちょっとまた考えさせていただきたい」

■老朽化する街路樹 倒木相次ぐ

自分たちが植えてきた樹木をどう管理するか。今、大きな課題に直面しています。

街路樹の整備が本格化したのは東京オリンピックの頃から。高度経済成長期の道路整備に伴い、環境対策・景観美化などの目的で植えられました。大気の汚れや剪定のストレスに強く、秋の黄葉の美しさから人気となったのがイチョウでした。

樹木にとってはアスファルトで固められ、車の重みで根は弱り、排気ガスにさらされる劣悪な環境です。街路樹の老朽化は進み、各地で事故が相次いでいて、死者も出ています。

去年、国交省が行った調査によると、イチョウ以外も含め1年間に平均で5200本の倒木が確認され、そのうち、老朽化などの要因による倒木は約1500本でした。

自治体は街路樹を点検し、倒木の恐れのある場合は伐採しています。ただ、対策には予算が掛かります。

日本樹木医会 小林明理事 「人材と予算は限りがあります。確実に危ないというのは、木が斜めになっているとか、枝が枯れて葉っぱがないというのは明らかに分かりますので。(Q.見つけたら通報してほしい)そうです」

街路樹には地域で愛されてきた歴史もあります。事故があったから切ればいいという単純な話ではありません。

第一発見者 「息子が保育園に行くのに毎日通っている道なので、やっぱり怖いですよね。(Q.どうしてほしい)難しいですね。残してほしい気持ちもありますけど。自然が売りではあるので多摩平は。木はあれば良いかと思います」