東北を代表する秋の郷土料理、芋煮は宮城県や山形県では芋煮、岩手県や秋田県ではいものこ汁など地域によって呼び名は異なりますが、河原で家族や仲間と鍋を囲む文化は秋の風物詩となっています。
宮城県味噌醤油工業協同組合の只埜さんによると、芋煮のルーツとして有名な説が2つありました。
1つは鍋掛松です。江戸時代に舟運で栄えた山形県の最上川で、船を待つ時間に川岸の松の枝に鍋を掛けて里芋を煮て食べたこと。 もう1つは秋の収穫祭としてこの時期に採れた里芋を使って野外で鍋をしたことと言われています。
大勢で河原に集う形に発展したのは、意外にも1960年代、高度経済成長期のレジャーブームに乗って広まったと言われています。
ちょうどこの時期にモータリゼーションが進み、車で郊外に行きやすくなったことで芋煮をする場所が徐々に広がっていきました。 その頃に、仙台市青葉区のJR愛子駅の近くにあった河鹿荘という旅館に山形県出身の女将がいて、芋煮を振る舞うだけではなく芋煮会場として場所の提供も始めたということです。
河鹿荘は2011年に閉館しましたが、その場所は今も元祖仙台いも煮会場広瀬川として芋煮を楽しむ人たちでにぎわっています。 芋煮は、地域によってバリエーションが豊かなことが分かります。
みそ味で豚肉を使うのが宮城県と福島県です。
宮城県民「仙台みそって有名じゃないですか。だからそれを使うためにみそ味になったんじゃないですか」「しょうゆに対抗するのはみそだから」「汁物はみそに慣れてますんで」「大豆がおいしいからとかですかね」「伊達政宗が好きだったとか」
只埜さんに伺ったところ、仙台藩を築いた伊達政宗が城下でみそ作りをさせていたことで、仙台に味噌の文化が根付きみそ味の芋煮が普及したのではないかということでした。 芋煮を新たな町おこしとして活用している地域もあります。山形県の置賜地域は、しょうゆ味で牛肉を使うのが主流ですが最近では長井市が特産の馬肉を普及するため、馬肉を使った塩味の芋煮をイベントなどで販売しています。
芋煮は新たな変化も加えながら、各地で愛される郷土料理となっていました。