発生から72時間以上が経過しました。埼玉県八潮市の陥没事故をきっかけに全国で下水道管の緊急点検が始まっています。その最前線を取材しました。

■発生から72時間 救助の課題は?

 老朽化するインフラ。各自治体が対応に追われています。

久留米市の職員 「独自に下水道管の緊急点検をさせていただいた」

 陥没現場では、懸命の救助作業が続いています。八潮市で道路が陥没した事故。まだ見つかっていない運転席は、下水道管内に落下した可能性が出てきました。

消防の会見 「(運転席が)どこにあるか分からないなかで壊れた。直径4、5メートル近い下水管に落ちている可能性も」

 生存率が著しく下がるとされる“72時間”を過ぎ、夜を徹しての作業が続いています。

消防の会見 「72時間、通常生存する時間かと思うが、今は救助することに全力をかけて活動している」

 事故発生当時、1つだった穴は新たな陥没で2つに。その穴がつながり、大きな1つの穴に。30日、飲食店の駐車場にもう1つの穴ができました。

 さらに31日朝、上空から捉えた陥没現場。30日は2つあった穴が1つにつながりました。映像には、寸断されているコンクリート状の構造物が見えます。形状や位置から見ると、八潮市用水でしょうか。

 今、救助作業の課題はどこにあるのでしょうか。

グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表 「スロープを作って石灰をまいて、崩れないようにして土嚢(どのう)を積む。水との戦い。後は土砂が崩れてくる。まず、水を防ごうとすること。崩れないようにする防水作業」            課題は大きく2つ。まずは「水を止める」作業です。何の水か、どこから来た水かが分かっていませんでしたが、1つの可能性として「川の水が逆流したこと」が挙げられています。

 近くには、荒川に注ぐ中川が流れています。この水が地盤を緩くし、さらなる土砂崩壊を招く恐れがあるため、水を止める対策を急いでいます。

消防の会見 「現地では水の流れ具合はそんなには多くないとお聞きしている。見えないだけで、がれきの所から流れ出てきているのか不明なので、専門家に見てもらうことが必要」

グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表 「巨大な空間ができたから、圧力がなくなると(水は)圧力の低い所へ流れてくる。これは水の性質。とにかく水を止めなければいけない」

 そして、もう1つが「スロープを作る」作業です。スロープ上を重機が動けるよう土を固める石灰などがまかれています。スロープは早ければ来月1日にも完成する予定です。

グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表 「土砂を取り除かなければいけないから、とても人間の力では間に合いませんので、重機をふんだんに使いながら土砂を取り除く作業をやらないと」

■下水道管 各地で緊急点検

 今回の事故、決して珍しいケースではありません。国土交通省によると、下水道管が原因で発生した道路の陥没は2022年度の1年間に全国で約2600件も起きています。

 その原因の多くが老朽化です。各地で緊急点検が行われています。

久留米市の職員 「異常はありません」

 今回の事故を受け、大阪府堺市では下水道管の内側に破損や劣化した箇所がないか、目視での緊急点検を始めました。

堺市の職員 「おーい、あんま奥行かんでええで。そこまでにしときな」

 設置から30年以上が経過している下水道管などが対象です。

堺市上下水道局 藤秀樹参事 「(八潮市では)一般のトラックが巻き込まれ、現在も多くの市民が(下水道の)使用制限に協力していることを踏まえると、大変痛ましい事故。今後、堺市としても適切な維持管理に努めていきたい」

■普段は見えない道路の下 どう調査?

 一方、29日から八潮市の現場周辺で行われていたのは、下水道管の点検とは別の調査です。 

埼玉県道整備部長  「数カ所でレーダーに小さな反応が認められた」

 八潮市の道路陥没の周辺で行われていたのは、他に「空洞ができていないか」を調べて陥没を予防する調査です。埼玉県は調査の範囲を地下3メートルまで、総延長3.5キロを調査するとしています。

 普段は見えない道路の下をどう調査するのでしょうか。実際に調査を委託された会社を取材しました。 

ジオ・サーチ 冨田洋会長  「まさに走るCTスキャンです」

 この車は「スケルカー」と名付けられた高解像度のセンサーを搭載した車です。

 マイクロ波を路面に照射。実際に道路を走行するだけで、地中の状況をスキャンできます。例えば、マンホールの上を通過すると…。

ジオ・サーチ 今井忠昭主任 「(Q.少し印が入りましたね)こちらがマンホールになります」

 その情報をもとに危険度をランク分け、工事の必要性を行政に報告するといいます。

 埼玉県は現場周辺の調査結果を公表しました。

埼玉県危機対策会議  「危険が生じる空洞は認められませんでした」

 ただ、数カ所でレーダーに「小さな反応」が確認されていて、詳細な調査を引き続き行うとしています。 

ジオ・サーチ 今井忠昭主任 「事前に調査をしていれば気付けた可能性は十分にある」