慶応義塾大学などの研究チームは失明した人の視覚を再生する治療薬の実用化を目指し、臨床試験を開始したと発表しました。

 慶応大学などが開発した「RV-001」はどちらか一方、あるいは両方の目で光を感じることができない状態の人の視覚を再生することを目指しています。

 眼球の内部に注射することで、網膜に残っている神経細胞に「キメラロドプシン」という光の感度が高い独自のタンパク質の遺伝子を投与し、光を感じることができるように変化させます。

 動物の実験では弱い光にも反応し、視覚が再生したことを確認できたということです。

 慶応大学によりますと、6日に1例目となる患者に対する投与を完了し、退院後の経過観察を行っているということです。

 1カ月ごとに効果が表れることを想定していて、半年間ほど経過観察をしながら安全性や効果などを慎重に評価していくとしています。

 今年中には6人から15人ほどを対象にした臨床試験を終了し、数年後の実用化を目指すということです。

 治療薬の対象疾患である「網膜色素変性症」は世界中で200万人ほどの患者がいるといわれていて、日本の失明原因でも2位となっていますが、予防法や治療法は確立されていません。

 慶応大の栗原俊英准教授は「全く光を感じない人に光を届けることが目標で、一歩ずつ前進したい」としています。