宮城県富谷市は、仙台市への通勤通学の新たな交通手段として都市型ロープウェーを検討しています。富谷市長が地下鉄延伸から転換した構想、実現の可能性を探ります。
若生裕俊富谷市長「公共交通の問題が課題、そして最も必要な施策として(仙台市地下鉄の)泉中央駅からの基幹公共交通を造ってほしいということで、本市としては市民の皆さんの声なので交通戦略を策定させていただきました」
富谷市は市民の声を受け、地下鉄に代わる新たな交通手段として都市型ロープウェーの導入に向けた調査を始めることを決めました。
福島県南相馬市のベンチャー企業が開発を進めている、Zipparの導入を検討しています。直線部分はロープウェー、カーブ部分はモノレールの特徴を生かした自走式の交通手段です。
仙台市のベッドタウン、人口5万人ほどの富谷市では約9000人が仙台市に通っていて、通勤通学の時間帯を中心に仙台市に向かう道路で渋滞が慢性化しています。仙台市への渋滞の無い交通手段は2016年の市制施行以来、富谷市民の悲願です。
若生市長が2016年の市長就任以来、様々な方向性で議論を重ねてきました。
若生裕俊富谷町長(2016年当時)「地下鉄の延伸または路面電車、BRT、3つのパターンでシミュレーションを描いて、交通アクセスは大きな課題で、時間はかかるが解決に向けて最善の努力を進めていく」
しかし、地下鉄延伸で400億円前後、BRTが100億円以上と膨大な事業費や工事期間などの問題がクリアできませんでした。
そこで浮上したのが今回調査を始めるZipparで、富谷市民は大きな期待を寄せています。
富谷市民「明石台に住んでいるので坂道が多く、ロープウェーがあれば泉中央まですぐに行けるので良いかと思います」「年とってから必要になってくるね」「無理だと思う。だって上を通るわけですよね、どうやってつなぐんでしょう」
新田智紀記者「仙台市泉区の将監トンネルの真上に来ています。富谷市の構想では泉中央方向から延長線上を通って、明石台に続くロープウェーを通す計画だということです」
Zipparは1台12人乗りです。整備費用が安く抑えられるほか、用地買収などの交渉手続きが不要なため想定では5年ほどの短い期間で建設できます。
若生裕俊富谷市長「何と言っても最大のメリットは整備費用が鉄道の10分の1。整備期間も今、想定しているのは中央分離帯に支柱を立ててロープでつなぐ形ですので、用地交渉が必要ない」
他にもZippar導入のメリットは多く、あらゆる課題解決につながると若生市長は話します。
若生裕俊富谷市長「運転手が必要ないということとCO2を排出しない、そういう意味ではこれからの公共交通を担える可能性を改めて現地訪問して感じた」
実現の可能性はあるのか?
Zipparの導入に向けて2022年から約2年かけて調査してきた神奈川県秦野市は、登山客を登山口まで運ぶ路線を検討し輸送能力は1時間当たり最大3000人を想定していました。
調査の結果、メリットとして建設費用が安く抑えられる一方で、設備の費用対効果が低く採算性が見込めないなどのデメリットが挙げられ、導入は見送られました。
秦野市は、Zipparの可能性についてクリアすべき課題は少なくないと前置きした上で、次のように話します。
秦野市はだの魅力づくり推進課猪野好春課長「渋滞する幹線で活用されていない上部の空間を着目したこと。ロープウェーとモノレールの両方の長所を生かした交通システムという考え方は、大都市圏においては特にメリットが高いのではないか。可能性は非常に高いと思っています」
富谷市の実現に向けては、隣接する仙台市の協力が不可欠です。しかし、郡仙台市長は難色を示しています。
郡仙台市長「富谷市さんがどのように考えているのか、国道4号をまたいでということになってきますと、ちょっとハードルが高いのではないかと少しお話させていただいたところ」
富谷市民が望む仙台市泉中央までの新たな交通手段は、実現に向けて課題が山積しています。
若生裕俊富谷市長「公共交通の最大の条件は安全性なので、今回しっかりと導入可能性の中で、安全性は最優先にしっかり見極めなければいけない。市民の皆さんの夢を実現するために最大限努力していきたい」