宮城県が10日に公表した最大クラスの津波の浸水想定では、女川原発で事故が起きた場合の避難ルートが浸水の範囲に含まれました。原発の敷地内は浸水しない想定ですが、万が一の時に逃げられるのか。周辺の住民からは不安の声が上がっています。
東北電力が2024年2月の再稼働を目指す女川原発の沿岸では、津波の高さは12.7メートルと予想され、東日本大震災で観測された13メートルとおおむね一致する高さになりました。
敷地内への浸水はなく、県は現在工事が進められている高さ29メートルの防潮堤で浸水を防げると説明しています。
東北電力は、11年前の福島第一原発での事故後に改められた国の規制基準に合わせ、安全対策工事の根拠となる津波の高さを23.1メートルと設定。東日本大震災前の基準から10メートル近く引き上げています。
それでも立地自治体からは、次のような声が聞かれます。
斎藤正美石巻市長】「原子力発電所は、本当にこれだけの地震が来た時に大丈夫か県のデータで県がしっかり検証しなさいと、すべきだ」
加えて課題として上がるのが、避難ルートへの影響です。石巻市の旧牡鹿町で行政区長のまとめ役を務める大澤俊雄さん(71)です。
大澤俊雄さん「(原発で)津波は何ともないかもしれないけれども、そのほかに何かあった時、避難するのに大変だなって。みんな浸水区域だもの」
避難計画に示された牡鹿半島から逃げる唯一の陸路、県道2号沿いでは複数の集落が浸水し5メートル以上の高さになる場所があるほか、半島を出た後の国道も浸水する予測となりました。
東日本大震災でも道路は壊れ、半島の集落は孤立状態になりました。大澤さんは、想定を出すからには住民のためになるようにしてほしいと話します。
大澤俊雄さん「こういう感じで出して通行できなくなるんだから、道路が冠水して。そしたら通行できるように道路の整備を早めにやってほしい。避難できないんなら避難できない前提で、計画を立ててほしいよね」
県の原子力安全対策課は、避難ルートを決めた石巻市や女川町の対応に応じて意見交換をし、必要であれば避難計画の見直しを検討していくとしています。