7歳で終戦を迎え旧満州、現在の中国東北部から家族とともに帰国した、宮城県東松島市の女性が、引き揚げの体験を紙芝居と絵本にまとめました。84歳になった女性は「戦争で幸せになる人はいない。記憶を語り継いでいきたい」と話しています。

 東松島市に住む三浦亨子さん(84)です。7歳のときに旧満州の奉天、現在の瀋陽で終戦を迎え、その後の混乱と食糧難などを乗り越えて、両親ら家族6人でふるさとに帰ってきました。

 三浦亨子さん「楽しかったことは何一つ覚えていません。苦労の味だけが7歳の心に残り、今回の紙芝居にすることができました」

 11日、東松島市の矢本東市民センターで披露されたのは、三浦さんが絵本専門士らの協力を得て約1年がかりで仕上げた紙芝居です。

 タイトルは「あんもちとチョコレート」。 奉天で暮らしていたころ、生活を支えるために売り歩いた「あんもち」と、終戦後に中国の兵士から手渡された「チョコレート」にちなんでいます。

 紙芝居には、終戦の知らせを受けた後、ランドセルに砂糖を詰めて住まいを出たことや、何日も歩き続けてあぜ道の脇の盛り土を枕に野宿したこと、父親との再会など、三浦さんの少女時代の体験が描かれています。

 三浦さんの母親は、徒歩や鉄路で移動するときに家族が離れ離れにならないよう、自分と三浦さんを含む4人の子どもの身体を長い白い帯で結んだと言います。

 三浦亨子さん「貨車から落ちたらばもう生きて帰って来られないの。それを知っているから帯で結んで、もし落ちたらその帯を引っ張れば結局戻って来るからそういう考えだったのかなと思って」

 11日は、100人ほどが大型スクリーンに映し出された紙芝居を鑑賞しました。

 小学6年生「家族みんなでそろったことの喜びや家族の絆の深さ、満州から日本へ帰る道のりの危険や過酷さがすごい感じられました」

 60代女性「もっともっと私たちもこういう戦争の恐ろしさを伝えていかなければいけないんだなって思います」

 三浦さんは今後、仲間とともに学校などで紙芝居を上演し、戦中、戦後の体験を語り継ぐことにしています。

 絵本は、東松島市内の図書館や学校に寄贈する予定です。

 満州から日本への引き揚げでは、終戦前後の混乱の中で、数多くの人がふるさとの土を踏むことなく亡くなりました。

 77年前の夏を振り返って、三浦さんは言います。

 三浦亨子さん「だから戦争なんてやめた方がいい。無い方がいい。私はそれだけ」