仙台市が災害への備えを高めようと、2022年7月に導入したバーチャルリアリティが、じわり人気を集めています。
12月22日、太白区茂庭の生出地区で開かれた防災講習会。地区の代表者ら25人が集まりました。参加者には、1人1台の大きめのゴーグルが。
仙台市防災・減災アドバイザー折腹久直さん「仙台市で2022年7月から運用を開始した、せんだい災害VRをまずご覧いただきます」
参加者は、まずバーチャルリアリティー、VRを使って地震を疑似体験します。その後、家具の転倒防止やライフラインの停止に備え、備蓄の重要性について講習を受けました。
参加した住民「実際に自分が動いているような、地震の揺れに合っているような感じでリアルでしたね。直前に地震の揺れが来た後に、こうやれば良いんだよっていうもの(話)が、具体的に頭の中に入ってきたような気がしました」
仙台市防災・減災アドバイザー折腹久直さん「最初に体験することで、その後の講座を聞かなきゃいけないんだなって入るスイッチとしての役割で、非常に助かっています」
仙台市は、災害への備えを高めようと20年にわたり地震体験車ぐららを地域の行事などで運用してきましたが、老朽化に伴い2022年3月に引退。
それに代わって、バーチャルリアリティによる災害体験せんだい災害VRを3400万円かけて整備し、2022年7月から運用を始めました。
地震のほか、津波災害、洪水・土砂災害、氾濫による浸水といった4つのパターンがあり、専用のゴーグルで周囲360度の映像と音で疑似体験することができます。
防災訓練や講習会など、町内会や地域の自主防災組織を中心に利用が増え、運用開始から半年で62カ所で3233人が体験。その引き合いは徐々に増えているということです。
生出地区連合町内会長山田勝三郎さん「(VRは)現実味があって、こんなんだからこうなるんだというのが頭の中に浮かんでくるのが良いかもしれないですね、早い方が。後から見せられても実感が湧かないというか」
地区の連合町内会の会長を務める山田勝三郎さん(78)です。講習会で見たVR映像は、自宅での地震対策を見直すきっかけとなりました。
生出地区連合町内会長山田勝三郎さん「2022年3月の地震では、食器ね、食器が全部戸が開いて落ちました。これ今止めるようになってますから、やってなかったことが大きいですね、不備があったんですね。ここら辺も落ちて、ここ瀬戸物だらけになったんです」
2022年3月に、仙台市でも最大震度5強を観測した地震では、食器棚から皿やグラスが落ちて割れたほか、壁にもひびが入るなどの被害を受けました。
生出地区連合町内会長山田勝三郎さん「仏壇がね、細くて高いもんだから、ここほらつっかえてるでしょ?だから出てこなかったのね。ここら辺まで斜めになって出てきたんです。
上ほら、長押が無ければひっくり返ったんだね、確か」
生出地区は東日本大震災の際、被害が小さかったことから避難所は設けず、使えた井戸水でライフラインの復旧を待ちました。そうした経験から、災害に対する危機意識はそれほど高くないと話します。
生出地区連合町内会長山田勝三郎さん「3.11でもあんまり被害がなかったんで、恐怖感っていうのはあんまり湧かないんですね。『また地震だ』ぐらいでね。こないだのもただ揺れるから怖かったけどね」
それでも20年にわたって町内会長を務めている山田さんは、以前から防災講習会に参加してきた中で、今回の講習はより実践的だったと感じています。
生出地区連合町内会長山田勝三郎さん「今回、初期の『なったらどうする?』という感じの話なんですけれども、自分たちが対応するような状況を映してもらうような感じだったのもありますし、考えさせられるようなところはありましたね」
仙台市では、防災講習会の冒頭にVRの映像を組み込むことにより、講習の内容をより自分の事として実感してもらいたいという狙いがあります。
仙台市減災推進課長濱俊伸課長「防災講話でいろんなお話をする前に、それぞれの災害のリスクを実際に体験をいただくことで、疑似体験をいただくことでそのリスクを把握した上でお話を聞くことでより理解の方が深まるかなと考えております」
更に地震だけではなく、洪水や土砂災害など複数の災害を疑似体験できるというメリットもあります。
仙台市減災推進課長濱俊伸課長「再現できるのが地震だけだったのが、水害ですとか津波ですとか、そういった災害も再現できるということがありますので、災害リスクを周知するにはいろんな手法というか今回新しい技術を使ってできたので、同じように進めていけたら」