ロシアの軍事侵攻を受け、宮城県石巻市に避難しているウクライナ人女性です。避難から1年5カ月が経過し、今の思いを聞きました。

 石巻市鹿又地区で毎月1回開かれている児童クラブ。ウクライナ出身のホンチャロヴァ・イリナさん(64)です。25年間、小学校の教師を務めていたイリナさんは、2022年7月から児童クラブの子どもたちと華道を体験したり、ウクライナの文化を教えたりするなど交流を深めてきました。

 この日、イリナさんにサプライズが。
 職員「ちょうどいらっしゃったので、ささやかながら誕生会をしたいと思います」
 児童「お誕生日おめでとうございます」
 イリナさん「ありがとうございます」
 児童「♪ハッピーバースデーディアイリナさん。ハッピーバースデートゥーユー」

避難から1年5カ月

 ロシアによる侵攻当初、約1カ月間自宅や地下で過ごしたイリナさん。2022年4月、石巻市内に住む長男を頼りウクライナ北部の都市チェルニーヒウから母親と避難してきました。
 児童「(イリナさんが)だんだん少しずつ元気になってきた」「この町に来て良かったなと思えるような気持ちになってほしい」
 イリナさん「前年も児童クラブで誕生日を祝ってもらいました。とても感謝しています」

 8月4日。100周年を迎えた石巻川開き祭り。震災の犠牲者を慰霊する灯ろう流しの会場に、イリナさんの姿がありました。石巻市で迎える2度目の夏。イリナさんは旧北上川に流す灯ろうに願いを込めて、平和という文字を書き記しました。

 東日本大震災の犠牲者と同じ4000の明かり。
 イリナさん「石巻市で亡くなられた人たちのことを思い出すと同時に、ウクライナの人たちが亡くなっていくことも思い出します。それぞれの灯ろうに書かれた願いがかなうことを心から願っています。でも、一番大切なのはやはり平和であるとそう思います」

 2日後、イリナさんは宮城県大崎市へ。
 イリナさん「皆さん、こんにちは。私はイリナです」
 広島に原爆が投下されてちょうど78年の8月6日、地元住民たちに平和の尊さを語りました。
 イリナさん「ウクライナを守っている人たちは、(戦争が始まる前は)ビジネスマン、科学者、医師など教養のある人々です。毎日、私たちを守ってくれている人たちが犠牲になっています。毎日ですよ。広島での出来事を思い起こして、核兵器や原子力発電所が戦争の兵器として(ロシアに)使われようとしたら、それがどれほど恐ろしいことか。皆さんは誰よりもご存知でしょう」

平和の尊さを訴える

 講演後、イリナさんは会場からほど近い大崎市三本木のひまわりの丘を訪れました。
 イリナさん「何て美しいの」
 咲き誇る約42万本のふるさとウクライナの花。侵攻前に毎年見ていた光景と重なります。
 イリナさん「このひまわり畑を初めて見た時、故郷のウクライナにいるような気持ちになりました」

 イリナさん「これは、ウクライナの大統領です。大統領の名前は?」
 児童「ゼレンスキー大統領」
 イリナさん「ゼレンスキーです」
 9月8日の児童クラブで、イリナさんが伝えたのは。
 イリナさん「日本とウクライナ(の写真)です。原爆投下後の広島です。ロシアが爆撃後のウクライナの都市にとても似ています」
 児童「怖い」
 イリナさん「私の街はチェルニーヒウです。街の通りを歩いてみましょう」
 児童「行ってみたい」「こんなきれいな街をやられるなんて。ひどいよ」「世界にこんなにきれいな街があったとは思わなかった」

 ロシアによる軍事侵攻から1年7カ月。イリナさんはいつか必ず来るふるさとの平和を願い続けます。
 イリナさん「(日本にいる間)たくさんのことを見たり学んだりしたいと思っています。何よりも平和が訪れる日を待ち望んでいます。それが最も大切な願いです」