能登半島地震の被災地では、現在も各地で断水が続き復興の妨げとなっているなか、注目されているのが井戸の活用です。
石川県七尾市の住宅では、蛇口をひねっても水は出ません。トイレの前には山の水を貯めたバケツが準備されています。
住民「想像以上に厳しい。こんなに水が出ないと厳しいものかと実感した」
七尾市では、水道の復旧は最も遅い地区で4月以降になる見通しです。
営業を再開できた美容院が利用しているのは、他の地域から運んできた井戸水などです。
井戸水は、飲料水に適さなくても様々な用途に使えます。13年前の東日本大震災でも広い範囲で断水となり、水を確保するために長い時間並ばなければいけませんでした。
井戸や温泉などを掘る会社を経営する寺嶋和広さんは、震災の際に災害に備えて敷地内に掘っていた井戸の水を近所の人などに無償で提供しました。多い時には1日1200人が給水に訪れたと言います。
寺嶋和広さん「バケツだったりポリタンクだったりスーツケースだったり。スーツケースにごみ袋を入れて、そのまま袋を結んで運んで行っていた」
約1カ月間にわたって水を配り続けた寺嶋さんは、井戸を掘っていたことで多くの人に感謝されました。当時、井戸水を使わせてもらった近所の人は、感謝とともに井戸があったこと自体に驚いたと言います。
近所の人「近所に井戸があるなんて考えられない。本当に助かりましたよ」
災害に備え井戸を活用する必要性は、宮城県沖地震や阪神・淡路大震災など大きな災害の度に言われてきました。
仙台市では、災害時に利用できる井戸の登録を呼び掛けて許可を得た事業所をホームページで公開しています。
仙台市環境対策課藤田規広課長「仙台市にある井戸は、災害時に断水が発生した場合には井戸水を雑用水として活用することができますので、地域の防災資源となるものだと考えております」
しかし、登録数は伸び悩んでいる上に制度自体も十分に知られているとは言えません。
寺嶋和広さん「例えば、地域の防災に使える井戸はこことこことか、飲める水はこことかそういうことは役所で把握しなければならない。防災用の井戸の普及は当たり前ですよ。備えですから。万が一の。それはもう間違いない」