教員の過酷な労働環境が問題となる中、働き方改革を進める仙台市立木町通小学校の取り組みです。

 教職に就いて4年目の大内舞花教諭(25)は、仙台市立木町通小学校に勤務しています。毎朝、勤務時間より1時間早く出勤します。児童の出席を確認し授業の準備や他の教員との打ち合わせなどで忙しく、勤務時間通りに来ていたら間に合いません。

働き方改革の取り組み

 教員たちの忙しさは、何年も前から問題となってきました。仙台市教育委員会が教職員が勤務時間以外に校内にいる時間を調査したところ、仙台市教育委員会の目標は360時間以内ですが小学校では約460時間、中学校では690時間ほどと目標を大きく超過しています。

 このため仙台市教育委員会は働き方改革の指針を策定し、2年前から本格的に取り組んでいます。木町通小学校での負担軽減策の1つが、同じ学年の教員が一緒に授業の方針を考えることです。
 若手の教員にとっては、先輩からのアドバイスをもらうことで精神的にも余裕が生まれます。
 大内舞花教諭「授業の進度がずれない。一緒に考えてより良いものにできるので助かってます」

他の教諭が担当する科目も

 大内教諭は、5年生のクラスを受け持っています。朝礼を終え1時間目の理科の授業が始まりますが、教室に入ってきたのはもう1人の教諭で理科の授業を担当します。
 木町通小学校では、5年生と6年生の理科や外国語の授業は担任を持たない専科の教員が受け持ちます。児童たちは、理科室に移動し教室に残った大内教諭は宿題の採点を始めました。以前は放課後に行っていた作業だと言います。
 大内舞花教諭「高学年は教科数が多く、それ以外の国語や算数に私も時間がたっぷり取れるのであるとないでは全然違うなと」

 児童にとっても様々な教員と関わることのできる良い機会になっています。
 児童「(他の先生に教えてもらうのは)楽しいし、とても良いです」「他の先生の個性が豊かで良いなと思う」

 授業以外で教員の負担を減らす試みも行われています。スクール・サポート・スタッフと呼ばれる仙台市の非常勤職員が、教員の代わりに教育委員会からの資料の確認や給食費や教材費の会計などを行います。
 木町通小学校スクール・サポート・スタッフ鳥谷部暢子さん「(教員は)朝早くから遅くまでいらっしゃって、事務作業や研修などたくさんの業務をされているので微力ながらお手伝いさせていただいています」

非常勤職員もサポート

 働き方改革を進めている島村信義校長は、教員の負担を減らさなければ児童にも影響すると考えています。
 木町通小学校島村信義校長「先生が疲れた顔をして毎日不安を抱えながら授業をしているようでは、子どもたちの成長や学びを大きくすることは難しいのではないかと感じています」

 教員の働き方の問題に詳しい名古屋大学の内田良教授は、教員の長時間労働を放置してきたことが教育全体の危機につながっていると指摘します。
 名古屋大学内田良教授「これまで教員の長時間労働の問題は労働者の問題だったところが、現在は長時間労働のために成り手不足が起きていて、この問題というのは決して教員の労働にとどまらない学校教育全体の問題、子どもが不利益を受けている問題という観点から捉えるべきだと思う」

 様々な改革で負担が減ったと感じている大内教諭は、以前は午後7時過ぎまで校内に残っていることも多くありましたが、今は午後5時半に帰れる日もあると言います。それでも、子どもたちと十分に接することができているかというとそうも言えないと話します。
 大内舞花教諭「教科担任制で時間は取れるようになったのですが、まだ(授業以外の仕事が)多いなと。先生ではなくてもできるところを外部にお願いすると、教材研究や子どもたちと向き合う時間がもうちょっと取れるのかなと思います」