毎年、ユニークな研究に贈られるノーベル賞のパロディー版「イグ・ノーベル賞」が発表され、今年は「お尻で呼吸ができる」ことを発見した日本人研究者らが受賞しました。

司会者 「生理学賞は『多くの哺乳類がお尻から呼吸できる』です」

 12日、東京医科歯科大学の武部貴則教授らの研究グループに、「多くの哺乳類がお尻から呼吸ができる」ことを発見したとして「イグ・ノーベル生理学賞」が贈られました。

 武部教授らはドジョウなどの一部の生物が肛門を通して腸内から酸素を取り込んでいることに注目し研究を進めました。

 授賞式ではドジョウの帽子を被って登場し、ユーモアを交えながら研究の説明をしました。

東京医科歯科大学 武部貴則教授 「色々な場面でもう少し酸素が届けたら安心に治療ができるなとか、あるいはもっといい治療になるなって、そういう場面ってたくさんございます。もし別の入り口から酸素を届けられたら既存の治療でどうしても補いきれない酸素のニーズとか治療のニーズを満たせるのかなと」

 武部教授らは「肺呼吸」を補助する方法ではなく、酸素を多く含む特殊な液体を腸内に注入することで、呼吸不全の哺乳類の症状が改善することを明らかにしました。

 この「腸換気法」は、人体の治療に応用した場合、従来の人工呼吸器などに比べ、体への負担を軽減できることが見込まれるということです。

 ただ、2017年に始まった「お尻からの呼吸」を実現させる道は平坦ではありませんでした。

東京医科歯科大学 武部貴則教授 「(Q.困難だったことは?)シンプルにどうやってこの研究を継続するかという問題です。全く新しいテーマだったので研究を支援する環境もなかった。本当にトライアンドエラーで好奇心を起点にして実現してきた事例なので、そういう意味でもとても楽しみながら研究を進めた記憶があります」 

 人体での臨床試験もすでに始まっているということで、「腸換気法」を利用した治療は2028年ごろにも、国内で実現する可能性があるということです。