大学生の就職活動事情です。首都圏への流出が深刻化する中、宮城県での就職を促そうと様々な取り組みを進めています。

 東京の大学に通う田中幹敏さんはこの日、就職活動で宮城県を訪れました。
 中央大学3年田中幹敏さん「インターンに行きます。今まで触れたことがない業界、職種なので何も知らない状態から始まるので、基礎的なところから知りたいと思っています」

 埼玉県で生まれ育った田中さんは、就職活動は勤務地にはこだわっていません。
 中央大学3年田中幹敏さん「自然が好きなので、東京の都会ではなくて自然豊かな所で働くのも良いかなと思って、Iターン就職に興味が湧きました」

 田中さんが参加したのは、仙台市に本社がある仙台冷蔵倉庫のインターンシップです。田中さんは実際にマイナス20℃の倉庫の中に入り、冷凍食品の仕分け作業を体験しました。
 更に、物流業界では欠かせないハンドリフトの使い方も学びました。

宮城県のインターンシップ

 このインターンシップは宮城県が2024年度に初めて開催した、みやぎつめあわせインターンという取り組みです。ものづくりの企業や震災復興を支える企業を巡る4つのコースがあり、5日間の日程で4社の就業体験ができます。
 宮城県雇用対策課高橋由美課長補佐「宮城県でインターンシップのやり方やノウハウ、学生に参加いただく機会を提供したいということで、今回のインターンシップの実施に至りました」

 最大のポイントは、UターンやIターン就職を目指す学生を支援するために宮城県が交通費や宿泊費を全額助成する点です。
 中央大学3年田中幹敏さん「今回参加するに至ったのは、最終的には交通費や宿泊費が全額援助されるのが大きい。補助が無かったら親と相談することはあるかもしれませんが、ちょっと厳しかったかなと」

 企業にも好評です。
 仙台冷蔵倉庫金森康治専務取締役「宮城県を選んでもらう良いきっかけを作ってもらえる補助事業だと思います。間口が多いというのは、お互いに良いことだと思っています」

 5日間にわたってインターンに参加した田中さんは、今回をきっかけに宮城県での就職も選択肢の一つとして、前向きに考えていきたいと話します。
 中央大学3年田中幹敏さん「実際に職場を見ることで、より具体的に現実味を帯びてIターン就職してみたいという気持ちが大きくなりました」

就職をマッチング

 宮城県での就職を後押ししようと、宮城県が2024年度に始めた取り組みは他にもあります。5月にウェブサイトみやぎむすびを開設し、宮城県企業のインターンシップなどの情報を掲載して学生に企業を紹介するマッチングも行います。
 宮城県雇用対策課高橋由美課長補佐「興味を持っていただいた学生については、企業に誘導して受け入れや実際当日受け入れるカリキュラムまで支援する」

 宮城県は、2018年度から県外在住の学生の就活支援を開始しました。宮城県企業の説明会や採用試験に参加するためにかかる交通費や宿泊費の半額を補助しています。
 2023年度は制度を利用をした学生287人のうち、宮城県企業への就職を決めたのは30人と過去最多になりました。

 学生を確保するため様々な取り組みを進める背景には、宮城県の学生の首都圏への流出が深刻化していることが挙げられます。宮城労働局の調査では、2024年の春に宮城県の大学などを卒業した学生の宮城県企業への就職率は、39.2%と過去最低となりました。
 マイナビ東北営業統括部藤澤幸浩統括部長「コロナ禍以降、オンラインでの採用活動が当たり前になったため、各社の企業説明会や面接などはオンラインを活用する大手企業が増えて、地方学生へのアプローチが増えている」

 更に、最近は勤務地を一定のエリアに限定したエリア別採用を導入する首都圏の企業への就職が増えていると指摘します。
 マイナビ東北営業統括部藤澤幸浩統括部長「宮城県に残りたい仙台市に残りたい学生は一定数いるが、首都圏企業と比べると給与、休日、福利厚生が宮城県企業の方が良くないので、そっちでという学生が増えている」

就活生が首都圏へ

 宮城県名取市の尚絅学院大学に通う綿谷由李菜さん(21)は仙台市出身ですが、2025年春に東京の映像制作会社に就職します。
 尚絅学院大学4年綿谷由李菜さん「数で比べると圧倒的に東京とか関西の方が多くて、宮城県は本当に少ないなという印象があって、やっぱり就職は東京にしようと」

 綿谷さんは、首都圏の企業と比べて宮城県企業の就活の情報を見つけることに苦労したと振り返ります。
 尚絅学院大学4年綿谷由李菜さん「情報サイトをすごくスクロールして、ようやく宮城県企業が出てくる。母数が多い東京や関西の企業が上に出てヒットしやすいので、圧倒されて宮城県企業が少なく感じる」

 売り手市場が続く就職戦線で、首都圏優位の中どのように宮城県での就職に結びつけるのか就活をめぐる学生の争奪戦は熱気を帯びています。
 宮城県雇用対策課高橋由美課長補佐「企業の皆さんには学生に向けて自社の魅力をPRしていただく、学生は魅力ある企業を知っていただく機会をどんどん作っていきたい」