大統領就任式を目前に控えたトランプ氏。就任前から存在感を示す一方で、その過激な言動は、未曽有の大火災となった被災地で、新たな火種も生んでいます。(1月18日OA「サタデーステーション」) ■復興支援に条件も? 過去最悪の火災が続くアメリカ・ロサンゼルス。これまでに27人が亡くなり、焼失するなどした建物は1万2000棟を超えています。サタデーステーションは規制が解除されたばかりの火災現場へ。 報告・笹原加奈子ディレクター 「こちらの道路はきのう立ち入り規制が解除された通りです。一面が焼け何もない状態です。まだ焦げ臭いもします」 いまだに住宅街の近くでも山火事が続いている状況です。そんな中、この火災を政治利用しようとする動きも。リベラルな土地柄のカリフォルニア州は、民主党の牙城です。昨年の大統領選挙でも、民主党のハリス氏が6割近い票を獲得しています。 トランプ次期大統領 「これは真の悲劇であり、(民主党の)ニューサム知事と現政権の過ちであると言えるだろう。復興は私の政権での仕事になりそうだ」 早速、トランプ氏は政敵である民主党のカリフォルニア州知事ニューサム氏や、ロサンゼルス市長らを批判。去年、ロサンゼルス市が消防局の予算を減らしたことも被害の拡大につながったと主張しています。トランプ氏に近い、共和党のジョンソン下院議長も。 共和党 マイク・ジョンソン連邦議会下院議長 「リーダーシップの問題だ。州や地元の政府で、職務の怠慢があったようだ。復興支援には何らかの「条件」をつけるべきだろう」 復興支援を、政治の駆け引きに使おうとする姿勢に民主党は猛反発しています。 民主党 カリフォルニア州ニューサム知事 「あの男(トランプ氏)は、この大火災を政治に利用しようとしています。私も言いたいことは山ほどあるが、今は言いたくない」 こうした状況に被災者は。 被災者 「トランプ氏が、バイデン大統領らが導入したものを撤廃してしまうことがないよう祈っています」 被災者 「火は本当に予測できなくて、多くの家を焼きました。大統領の支援を期待したいです」
■ドジャース本拠地で支援イベント
今月7日以降、ロサンゼルスの10か所以上で発生した大規模火災ですが、17日現在も燃え続けているのは2か所。高級住宅地付近で起きた「パリセーズ火災」では39%しか鎮火できておらず、「イートン火災」でも65%しか鎮火できていない状況です。
トランプ氏の大統領就任式が行われる20日からは、被災地で再び、乾いた強風「サンタアナの風」が吹く可能性があります。空からの消火活動にあたっているカナダの企業によると、対応できるのは、風速35メートルまでだと言います。 空からの消火活動にあたった企業 「初日の夜に何度も現場へ向かいましたが強風で引き返さざるを得ませんでした。1時間以内に現場に到着すれば、火災を食い止めることができたはずでした」 当時の「サンタアナの風」は風速40メートルを超えていました。 報告・笹原加奈子ディレクター 「こちら、ドジャー・スタジアムの駐車場があるんですけれども、テントがずらっと並んで、沢山の人が集まっています」 現地ではロサンゼルスに本拠地を置くスポーツチームによる支援活動も始まっています。そこにはサッカー元日本代表・吉田麻也選手の姿もありました。 ロサンゼルスでは、現在も5万人以上に避難命令が出されていますが、避難所でノロウイルスの発生が確認されるなど、新たな問題も起き始めています。 ■植物が“燃料”に?被害拡大の一因か 報告・笹原加奈子ディレクター 「燃えた住宅の目の前の歩道には芝生が広がっているんですが、非常に乾燥していることがわかります」
ロサンゼルス一帯に生えていた植物の乾燥。これが火災被害拡大の一因になった、との指摘も出ています。ロサンゼルスでは昨冬に例年の2倍の雨が降った結果、春には大量の植物が生い茂りました。しかし、その後は一転、雨はこの8カ月間で7.4ミリしか降りませんでした。植物はこの記録的乾燥により、大量の“燃料”になってしまったといいます。森林火災の専門家は、普段から火災が多いロサンゼルスの植物の特徴について… 日本大学生物資源科学部 串田圭司教授 「(ロサンゼルスでは)燃えやすい特徴と火災の後、広がる成長が早い特徴の植物がどんどん支配的になっている。外来種が多い」 こうした外来植物は、ハワイ・マウイ島の火災の時にも問題視されました。ロサンゼルスでは、8年前からヤギを放って駆除する試みが始まり、アメリカ軍も活用していましたが… ヤギを使った外来植物駆除業者 「地味な事業なので政治家にとって優先順位が低いのでしょう」 ロサンゼルス消防局はさらなる被害拡大を防ぐため、自宅周辺の草は刈り取るよう呼び掛けています。