宮城県で暮らす外国人が急増し、医療や行政といった専門分野で通訳の不足が深刻化しています。
村井宮城県知事「カンボジア人材の送り出し、および受け入れの推進に関する覚書を締結することといたしました」
郡仙台市長「海外からの観光客をしっかりと仙台、宮城、東北に呼び込みたい」
現在、宮城県で暮らす外国人は過去最多の2万7000人余りで、外国人労働者や観光客を増やそうという施策もあり、更に増えると見られています。こうした中で、言葉の問題が課題になっています。
日常会話の日本語を話せる外国人でも、役所での手続や病院で症状の説明の際は通訳が必要という人が少なくありません。
宮城県国際化協会伊藤友啓シニアチーフスタッフ「病院の言葉もそうですし役所の言葉もなかなか耳慣れない、普段の生活には無い言葉がたくさん使われたりするので、日常会話の言葉だけではなかなか難しい」
こうした際に外国人を手助けするのが、コミュニティ通訳です。病院などで通訳が必要となった場合、宮城県国際化協会に申し込むと登録している約20言語130人の通訳の中から、協会が適した人を派遣します。報酬は自治体が出すため、利用者は費用を負担する必要がありません。
仙台市で活動するコミュニティ通訳のドゥワディ・バワニさんは、15年前ネパールから日本に移住しました。当時、宮城県に住むネパール人は100人にも満たず、言葉の問題もあり苦労が絶えなかったと話します。
ドゥワディ・バワニさん「毎日毎日不安で、どこに相談すればいいか分からなくて。最初は結構大変でした。子どもが小学生で、小学校の授業参観とか三者面談とか行ってすごい何してるんだろうと思って。言葉が分かれば、自分の子どもの学校の様子も分かるだろうなと」
現在、宮城県で暮らすネパール人は3000人以上で、学校での保護者面談やマイナンバーカードの登録など、バワニさんは様々な通訳の依頼に応じています。
ドゥワディ・バワニさん「メインは学校に当てはまるような内容が多い。自分が長く住んでいて、子どもを日本に呼び寄せたいとか」
バワニさんに通訳してもらいながらネパール人への母子手帳の交付や育児の相談に当たった
保健師の佐藤郁恵さんは、日本の制度や文化を熟知したバワニさんがいることで心強かった話します。
仙台市宮城野区保健福祉センター佐藤郁恵保健師「食事の文化の違いは目立つなって印象ですね。それがきっかけで保育園辞めちゃったりとかする方もいたりとか。安心して相談を受けている感じはすごくありますね。通訳さんと2人で話を始めたりっていう形で信頼関係が生まれていったり。ネパールの方が増えているので通訳を担う方が増えてほしい」
医療現場でも、通訳不足が深刻です。コミュニティ通訳のAさんは、通訳は言葉を訳すだけではなく相手の心や性別などへの十分な配慮が必要と言います。
Aさん「診察、入院、手術、救急室とか色々あります。妊婦さんの健診と赤ちゃんの1カ月健診とか。落ち着かせてから話を聞く。平仮名も片仮名も漢字も読めても空気は読めなければね。日本語上手とはいえませんね。通訳の仕事は、忙しい時はすごく忙しいです。あちこち頼まれてあちこち断らなければならない。宮城県でも通訳足りなくて、東京都、千葉県、茨城県から来て仕事をする通訳さんは何人か会ったことあります」
コミュニティ通訳は、他の業務を兼ねているケースもあり依頼者の要請に応えられないことも多くあります。
宮城県国際化協会伊藤友啓シニアチーフスタッフ「あす来てほしいんだけれども、通訳の方があすは行けないので都合が良いあさってにしてもらえませんかみたいなことで、通訳の都合で色々な予定が決まっていくことも最近出始めて来ていて」
特に最近深刻なのは、刑事事件などに関わる通訳の不足です。警察は、ホームページなどで
通訳を募集していますが、思うように集まりません。
全国で多発する外国人グループの犯罪では、通訳が不足しているために捜査が進まないということもあるようです。2024年3月には、裁判で通訳のミスによりパキスタン人の被告の供述が言葉通りに訳されていないとして、差し戻し判決が言い渡された例もあります。
事件の場合、被疑者への聴取では警察と弁護士で別の通訳を付ける必要があるなど、条件が
より厳しくなることも通訳不足の背景に挙げられます。外国人の増加とともに様々な分野で
通訳不足が深刻化しています。
仙台市では窓口に外国語を自動翻訳する字幕表示システムを試験導入するなど、行政も対策に乗り出していますが十分ではありません。
宮城県国際化協会伊藤友啓シニアチーフスタッフ「通訳を全国的に支えていく取り組みもしていかないと。最近だと、通訳サービスを提供しているような企業さんとかも出てきているので、予算の問題もありますけど活用していけば」